(この物語は…毎朝のヨガ習慣をはじめてから108日目を迎えた、ヨガが好きなOL 紗季に、久々に起こる、恋と仕事の変化。朝のヨガスタジオで巻き起こる男女のハートフルなラブストーリー。小説のストーリーに合わせ、毎週おすすめヨガポーズをご紹介します。
Week 5は、主人公である紗季との交際をスタートさせた優斗の視点でストーリーが展開します!)
Vol.31 Week 5 「39歳の初恋」 (3)本当は知りたいのに
早めに仕事を切り上げ、僕はアレックスと飲みに出かけた。
「紗季とは上手くいったということか」
当たり障りのない同僚の近況報告が落ち着いたとき、アレックスが一言放った。
「あぁ、まぁそう、お前にも報告しておこうと」
僕はきどったまま、答えることになってしまった。情けないが、本当は紗季のことを聞きたくてしょうがない。
「優斗は、紗季のことを聞きに来たんだろう?」
「アレックス、そういうつもりじゃない、そんな女々しいこと」
「サントーシャ」
僕が言葉につかえていると、アレックスが一言つぶやいた。
「インド人か何かの名前?」
「ヨガの教え。サンスクリット語で、満足とか知足という意味さ。今あるものに満足することだよ、大事なのは。
逆にやってはいけない心得に『サティヤ』っていうのがある。嘘をつかないこと。そろそろ楽に生きるときだよ、精神的には。」
「サントーシャ、サティヤか、キレイな響きだな」
「サキもキレイな響きだ」
アレックスの紗季への気持ちは、それまで気付かないでいた。僕は自己犠牲的な生き方をしてきたと思っていたが、アレックスの前ではそれがちっぽけなことだったと気付いた。
アレックスは、どこまでも深く大きいのだ。
「本当は、自分のものにしたかったけれど、僕はヨガティーチャーだから。サントーシャ。見返りはいらない。ただ、思うだけで」
そのあと、アレックスは言った。
「でも、聖人君子じゃないから、サティヤを守って発言すれば、本当はお前のことを苛立っている。」
アレックスは穏やかに笑って、ゆっくりブランデーを飲む。
僕は、アレックスには叶わないと思った。紗季の背中も僕の背中も押しているのは、この人間だったのだと。
自分の心に手を当てたとき、いまある大事なものを、失わないように、僕は全力で挑もうと思えた。
アレックスに礼を言うと、僕は紗季の会社まで走っていた。
(つづく)
今週のおすすめヨガ「チャイルドポーズ」
Week 5のおすすめは「チャイルドポーズ」。
ヨガでは、お休みや癒しのポーズとしても使われます。それだけ、リラックスすることができるということです。ただ単なるお休みではなく、呼吸を落ち着かせ、内臓を刺激し、力を抜くことができます。
出来るだけ、背中を緩めて自由な背骨を作り、呼吸に注目します。呼吸が整うことで、さらに骨・筋肉ともに動かすことができ、自由な上体を作ることができますよ!苦しい時、休みたい時、朝起きるときにおすすめ。
「チャイルドポーズ」の流れ
- 膝をたて、両膝に均等に体重がかかるようにしまっすぐ立つ。また、足先の親指と親指を重ね合わせておく。
- 両かかとにおしりをおとし、上体はリラックス。この時腰が後に落ちてしまわないように、注意しましょう。息を吐きながら、ゆっくり膝を床の方へ向かって開いていきます。
- 息を吐きながら、上体を前傾します。なるべく前方へ手をひっぱります。
(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)
★この物語の登場人物
新城紗季(しんじょうさき/30歳)プロダクトブランド販売会社のマーケティング部につとめる。この物語の主人公。
アレクサンドル・ハミルトン(アレックス)(38歳)フランス系アメリカ人。ヨガスタジオを経営。
相場優斗(あいばゆうと/38歳)外資系投資銀行の行員。
桜井真治(さくらいしんじ/35歳)紗季と同じ会社でニューヨーク店勤務。紗季の元恋人。
東谷しおり(ひがしやしおり/25歳)ヨガ仲間のひとりで、紗季の会社の事務系OL。