(この物語は…毎朝のヨガ習慣をはじめてから108日目を迎えた、ヨガが好きなOL 紗季に、久々に起こる、恋と仕事の変化。朝のヨガスタジオで巻き起こる男女のハートフルなラブストーリー。小説のストーリーに合わせ、毎週おすすめヨガポーズをご紹介します。
Week 3は、紗季の元恋人である桜井真治の視点でストーリーが展開します!)
Vol.20 Week 3 「ニューヨークの真実」 (6)逆転する関係
「真治、帰ってきてくれてありがとうね」
大晦日は、帰省することにした。実家の新潟に。
日本海側の新潟に冬に帰省するのは、東京からでも大変で、20代の頃は数年に1度しか帰らなくなっていた。
過去を振り返らない気質もあって、同窓会も全く顔を出していない。久々に会う母は、急激に年をとった様子で、再会のひとこと目にそれを言ってしまいそうで、口をすぼめた。
「隣のみっちゃんがね、再婚したんだとか。それで双子が生まれたって。まぁ、いまのご時世は再婚もよくあることね。あんたなんて、まだ一回も、、ねぇ」
母は豪快に笑っていた。
隣に住んでいた光男は、こどもの頃、毎日一緒に遊んでいた幼なじみだ。光男は高校を卒業して、地元で魚屋になった。その頃から会わなくなり、もう20年話していない。
僕はいつの間にか、自分は東京に出て、さらにはグローバルな仕事をするということに酔って甘えて、心を育ててはいなかった。
「よぉ、光男」
「久しぶりだな、真治。立派にニューヨーカーらしいな」
「まあ、そこに住んでるっていうだけだ。双子を育てているお前の方がよっぽど偉いよ」
「どっちが偉いなんてないだろうよ。なんて、俺はお前に対して劣等感たっぷりだったけどな。20年、いやもっとかな、お前に劣等感もって過ごしたんだよ。隣にお前が住んでいなかったらとすら思ったことあった」
「おいおい、笑ってるけど、衝撃的なこと言うなぁ」
「こどもが生まれると変わる。ただただ心を豊かに、生きたいと思うようになって。入って来た魚の量や状態にとらわれたら、その魚を食べてもらうひとを豊かにはできん。
どんな状態であれ、誰かの幸せを願う、そのためにできることを懸命にやるだけだな」
光男の表情は喜びに満ちていた。
紗季だっていつも前を向いていた。
「きっと服だけ変えても、服に合わせただけでも、わたしが変わらなくちゃダメなんだよね」
紗季はニューヨークではいつも泣いていた。あの時は、いっぱい背伸びをしていたんだろう。僕は何にも気付いてやれなかった。
ニューヨークも東京も遠く感じる。東京よりもニューヨークよりも、ここでは息が白い。
珍しく携帯がさわぎを知らせた。
「あけましておめでとうございます。今年からちゃんとわたしも新しくなろうと思うので、年明け4日のヨガスタジオのあと、お話できますか?」
紗季からのメール年賀状だった。
(つづく)
今週のおすすめヨガ「三角のポーズ」
Week 3のおすすめ「三角のポーズ」も、先週の「木のポーズ」同様、ヨガの代表的なポーズ。
腕から体側、脚までをバランスよく伸ばし、大地を踏みしめる力強いポーズ。滞りがちな股関節周辺の関節の動きや筋肉を動かし、リンパの流れや血流も良くします。
股関節の位置が上手くはまると、きつさがなくなり、関節への心地よい刺激で、身体の中がぽかぽかしてきます。
「三角のポーズ」の流れ
- 足裏全体を床に根をはるようにイメージし、ひざ頭、うちももを引き上げ、骨盤まで足の裏からの意識を繋げていきます。上体は、緊張させず、リラックス状態を意識します。
- (1)の状態から、左足を大きく一歩後方へ進め、マットに対し、45度左側に足先を開きます。左足うら全体で、床を押します。この時、親指からうちももを特に意識をおき、うちももを内側に少しひねるようにし、左の骨盤を前に押し出します。
- (2)の状態から息を吐きながら、左の骨盤を今度は真横に開いていきます。左足先は、マットに対し90度に開き、両手も開きます。
- 骨盤を左側にずらし、右手を前方にひっぱられるように移動させます。左の骨盤と右手先の感覚が繋がるように意識します。反対側も同様に行います。
- 右手を右足に落とし、左手を天井に上げ、左胸から天井へひっぱられるようにカラダを広げます。
(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)
★この物語の登場人物
新城紗季(しんじょうさき/30歳)プロダクトブランド販売会社のマーケティング部につとめる。この物語の主人公。
アレクサンドル・ハミルトン(アレックス)(38歳)フランス系アメリカ人。ヨガスタジオを経営。
相場優斗(あいばゆうと/38歳)外資系投資銀行の行員。
桜井真治(さくらいしんじ/35歳)紗季と同じ会社でニューヨーク店勤務。紗季の元恋人。
東谷しおり(ひがしやしおり/25歳)ヨガ仲間のひとりで、紗季の会社の事務系OL。