「フォロワーが一気に300とはすごいな」
裕也は何の気なしに励ましてくれる。
そして、あの日ドルフィンでの再開から4ヶ月が過ぎていた。
「かんぱーい!10kg減達成!」
最近裕也とは、2kg減るごとに会ってお祝いをしていた。
裕也と作ったダイエットプランの4ヶ月で8kgの最初の計画を早めに達成できているのは、他でもない、このお祝いの時間が愛おしいから。
「最近は、ポールダンススタジオにいても、恥ずかしくなくなったよ」
という私に、まさかインスタのIDにシンデレラを使うとは思わなかったけど、この調子だったら、シンデレラストーリー達成しそうだな、裕也は茶化すことなく言った。
「なんだか、いつもの調子じゃないのも怖いよ」
と言ってみたけど、裕也はあまり元気がない。
紗江が言っていた、ポジティブとネガティブの話が本当ならば。私だけが調子に乗っているようで、そんな私に、嫌悪感を抱いた。
もしかしたら、紗江との間に何かあったのかもしれない。
私は自分の心の機微を悟られないように尋ねた。
「裕也は、最近どう?仕事は?」
「ぼちぼちかな、特に変わったことはないよ」
裕也は顔色一つ変えずにつぶやいた。
私も支えてもらっているだけで、裕也のことを見ていなかったのかもしれない。
もしかしたら、あの時の紗江と同じように。
(この小説は、毎朝4時更新です。続きはまた明日!)
物語の登場人物
佐藤奈美(30)特許取得を専門とする弁理士事務所に勤める事務員。
結城紗江(30)中堅劇団の舞台女優。奈美と大学サークルの同期。
森野由加利(30)投資銀行に勤めるキャリアウーマン。奈美と大学サークルの同期。
近藤安子(30)専業主婦。一児の母。奈美と大学サークルの同期。
遠野裕也(30)紗江の大学時代の恋人。
伊藤慶太(34)奈美の行きつけの美容室のスタイリスト。