今日のカフェボンボンは、茨木のり子の詩詞集『おんなのことば』。
「自分の感受性くらい」「わたしが一番きれいだったとき」「見えない配達夫」「落ちこぼれ」「食卓に珈琲の匂い流れ」など、名詩35編を収めた珠玉のアンソロジーです。小さく愛らしい、ポケット判の詩集です。ぜひ、お手にとってみてください。
『おんなのことば』
著者:茨木のり子
出版社:童話屋
どこかしんとした静けさを持つ人がいる。そんな人に出会うとこの詩を思い出す。
田沢湖のように深く青い湖を
かくし持っているひとは
話すとわかる 二言 三言で
それこそ しいんと落ち着いて
容易に増えも減りもしない自分の湖
さらさらと他人の降りてはゆけない魔の湖
「みずうみ」の一節です。人の本質に触れた、深い深い言葉です。茨木さんの詩は、生身の人間のありよう、心の奥を映し出します。
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて(「自分の感受性くらい」より)
それは、自分がいちばんわかっていたことなのに、目をそむけていたくて。でも、いったん心に問いかけてみたらもう怖くはない。潔い言葉が背中をそっと押してくれる。
この詩集の「朝時間」は、人を慈しむ、愛にあふれた詩「子供時代」の一節より。
その人の子供時代に思いを馳せるのは
すでに
好意をもったしるし
Love, まっこリ〜ナ