今日のカフェボンボンは、春風のような詩集。
詩人の高橋順子が、みずみずしい感性で日常の風景をすくいとります。「私の水平線」「滝桜」「冥王星の夢」「花と海」「雨ふるふる」など39編を収録しています。
『あさって歯医者さんに行こう』
著者:高橋順子
出版社:デコ
黄色いメロンを食べ終わったら
メロンの皮はカヌーになって
海を恋するふうだった
ガラスのお皿の水面から
スプーンを櫂にして
漕ぎだしてもいいんだよ
「黄色いメロン」の始まりです。カヌーになった黄色いメロンはきっと、すがすがしく自由な気分で川を下っていくだろう。7月の陽光にきらきらと輝いて。
高橋順子さんの詩は体のすみずみまでしみ通って、心を潤してくれる。忘れていた懐かしい風景を思い出したり、くすんでいた景色が急に色づいて見えます。
とても印象的な題名『あさって歯医者さんに行こう』は、ある詩の一節からとったもの。さざんかの花があした散ってしまったら、歯医者さんにはまだ行かない……。そんなことを思ってぐずぐずしている。この気持ち、すごくよくわかります。
メロンの皮やさざんかの花、ありふれた日常がひとつの詩によって輝き、忘れられないものとなる。
この詩集の「朝時間」は、「花の道」の一節より。
泉の湧く音がする
ごはんよー
と呼ぶ若かった母の声も聞こえてきて
Love, まっこリ〜ナ