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心に残る詩集②『あさって歯医者さんに行こう』

 

今日のカフェボンボンは、春風のような詩集。

詩人の高橋順子が、みずみずしい感性で日常の風景をすくいとります。「私の水平線」「滝桜」「冥王星の夢」「花と海」「雨ふるふる」など39編を収録しています。

20130313

あさって歯医者さんに行こう
著者:高橋順子
出版社:デコ

黄色いメロンを食べ終わったら
メロンの皮はカヌーになって
海を恋するふうだった

ガラスのお皿の水面から
スプーンを櫂にして
漕ぎだしてもいいんだよ

「黄色いメロン」の始まりです。カヌーになった黄色いメロンはきっと、すがすがしく自由な気分で川を下っていくだろう。7月の陽光にきらきらと輝いて。

高橋順子さんの詩は体のすみずみまでしみ通って、心を潤してくれる。忘れていた懐かしい風景を思い出したり、くすんでいた景色が急に色づいて見えます。

とても印象的な題名『あさって歯医者さんに行こう』は、ある詩の一節からとったもの。さざんかの花があした散ってしまったら、歯医者さんにはまだ行かない……。そんなことを思ってぐずぐずしている。この気持ち、すごくよくわかります。

メロンの皮やさざんかの花、ありふれた日常がひとつの詩によって輝き、忘れられないものとなる。

この詩集の「朝時間」は、「花の道」の一節より。

泉の湧く音がする
ごはんよー
と呼ぶ若かった母の声も聞こえてきて

Love, まっこリ〜ナ

 

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Written by

まっこリ〜ナ

編集者・ライター

出版社勤務を経てフリーランスに。図鑑や写真集、子どもの本や雑誌などの編集に携わる。本がくれる愛のチカラを糧に生きる日々。いちばん好きな本の主人公は長くつ下のピッピ。
趣味は草花園芸、編み物、ランニング、スポーツ観戦。

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