今朝のカフェボンボンのおすすめは『ボヌール』。
伝説の銅版画家・南桂子の詩情豊かな作品集です。
『ボヌール』
著者:南桂子
出版社:リトルモア
花や鳥、雨の匂いがあなたをメルヘンの世界へいざないます。
南桂子が好んで描いた少女たちは、小首を傾げて鳥のさえずりに耳を澄ませてるかのよう。少女はいつも素敵なものを抱えている。猫や羊を胸に抱き、手には風船やマロニエの葉を持って。
花や葉の単純なやさしい線に、子どもの頃のお絵描きを思い出しました。赤いチューリップも三角の塔のある西洋のお城も、小さな女の子のお気に入りのモチーフですよね。おとぎ話の「少女=あたし」だと夢見てる……。好きなものを繰り返し無心に描く時。その幸せな気持ちが作品からあふれています。
南さんは1954年に40歳を過ぎてからパリに渡り、銅版画の道を極めました。28年間、一度も日本に帰ることはなかったそうです。柔らかく愛らしい作品からは想像できない、波乱に満ちた生涯を送った人でした。
『ボヌール』の「朝時間」は「さくらんぼの木」。
2羽の赤い鳥が歌うそばから、さくらんぼの実が音符に変わっていく。そんな想像をしながらいつまでも眺めています。
すっかり外は秋の気配。本のお供には、カフェオレなどいかがですか。幸福を意味する『ボヌール』の清らかな静けさに、心もしっとり潤います。
Love, まっこリ〜ナ