朝読書におすすめの本をご紹介する『まっこリ~ナのCafe BonBon』。小説やエッセイ、暮らしや料理の本など心に効く本をセレクトしています。
今日の「まっこリ~ナのカフェボンボン」の本棚は、『あめりかむら』。
作家の石田千の小説集、文庫新刊です。5編の作品を収録しています。ひらがなの「あめりかむら」というタイトルが印象的。カバー装画も素敵です。
『あめりかむら』
著者:石田千
出版社:新潮社
石田千の小説やを読むとき、途中で思わず本を閉じ、深呼吸をしてまた読み始めることがある。心の奥にしまっておきたくてもどうにもならない気持ちに共感することが怖いのかもしれない。それでもぎりぎりのところで踏みとどまって、生きる力を取り戻していけると思わせてくれるのが著者の小説だと思う。
「あめりかむら」では、自分の病いと死を意識する主人公が大阪に旅をして、学生時代の友との出会いを回想する。どれも心をとらえて離さない作品だけれど、下町の小さな店、古書の本棚のある飲み屋を描く「大踏切書店のこと」がとくにしみました。春の夜、初めて店に入った主人公は本棚から『アルプスの少女ハイジ』を手に取り「ハイジの食事を読みながら、とうふを食べたり酒を飲んだりした」——。店主や常連客との出会いがあり季節が過ぎてゆく。ちょっと昔の小説のような趣のある小説です。
人生は悲しみとともにあるけれど、それを受け止めたその先にあるものは。もう一度、外の風景を眺めてみようか、空を見上げてみようか、旅に出てみようかと思える一冊を夏の終わりに。
ラブ&ピースな一日を。
Love, まっこリ〜ナ
「まっこリ~ナのカフェボンボン」を読んでくださってありがとうございます。「カフェボンボン」が心ときめく本との出会いの場となりますように。
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