朝読書におすすめの本をご紹介する『まっこリ~ナのCafe BonBon』。小説やエッセイ、暮らしや料理の本など心に効く本をセレクトしています。
今日の「まっこリ~ナのカフェボンボン」の本棚は、『すずの爪あと』。
心理サスペンスの名手・乃南アサが、人間の心理を巧みに描く短篇小説集です。表題作「すずの爪あと」をはじめ「こころとかして」「出前家族」「氷雨心中」など十一篇を収録しています。人の心の裏側を覗いてみたい時、ちょっと不穏な物語を読みたい時にどうぞ。
『すずの爪あと 乃南アサ短編傑作選』
著者:乃南アサ
出版社:新潮社
一緒に暮らしている家族でも、「え? そんなふうに思ってたの」なんていうことはよくあること。他人だったらなおさらで、勝手な思い込みがエスカレートしたり、ほんのすれ違いがとんでもない誤解を生むことだってあるかもしれない。
「こころとかして」の主人公、須藤広樹は歯科技工士の仕事のかたわら、ジュエリー工房でも働いていた。そこで彼が熱心に作っていたのはある女性へのプレゼント。「——彼女の指に、ぴったり合うように作るんだ」「——あの娘の指を飾るんだ。俺の指輪で」断定的な物言いに感じる違和感。彼と女性との関係がだんだん明らかになるにつれて、人間心理の怖さに絡め取られそうになる。汗がじっとりと出てくる感じです。
著者は、ちょっとしたことをきっかけに、ある一線を越えてしまう人たちの心理に容赦なく光を当てる。仕事帰りにコーヒー店に寄るのを楽しみにしているサラリーマンを描く「指定席」、レンタル家族をモチーフにした「出前家族」など、どのストーリーにも意外な展開が待っています。
ゾクッとするだけでなく、なんともいいようのない切なさが残るのも、乃南アサの小説の魅力だと思います。
乃南アサさんの小説、以前ご紹介したこちらもオススメです。
*前科ある女性ふたりの人生を描いた感動作『いつか陽のあたる場所で』
ラブ&ピースな一日を。
Love, まっこリ〜ナ
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