朝読書におすすめの本をご紹介する『まっこリ~ナのCafe BonBon』。小説やエッセイ、暮らしや料理の本など心に効く本をセレクトしています。
今日の「まっこリ~ナのカフェボンボン」の本棚は、『スナック墓場』。
注目の作家・嶋津輝のデビュー短篇集。商店街やスナック、倉庫などを舞台にした物語7篇。人と人とのつながりが心に残る一冊です。
『スナック墓場』
著者:嶋津輝
出版社:文藝春秋
亜耶と霧子は今日も倉庫内のラインに並んで黙々と作業をする。シャンプーの試供品を詰める日もあれば、ボディーソープと石鹸を箱詰めする日もある。日雇いのアルバイトとして働く女性同士の心を機微を描く「ラインのふたり」。
初めて出会った日から、タイプの違うふたりはなんとなく馬が合う。お弁当を持参する霧子は、デザートを二人前、亜耶の分も用意していく。通勤の行き帰り、亜耶は霧子を自分の車に乗せてくれるけれど、家の前までは行き来しないのが暗黙のルール。たまに食事を一緒にしても、お互い深く立ち入りはしない。
表題作の「スナック墓場」では、かつてスナックで働いていた女性たちが、競馬場で同窓会をする。主人公の克子はスナックでの日々を想う。無愛想な克子はいつもコップ磨きに励んでばかりいた。そんな彼女がある日、「ああ、いま自分はこの店の一部である」と自覚する。自分の居場所はここだと感じたその日から、彼女は店になじんでいく——。
7つの物語のなかで描かれる女性たち、夫婦や姉妹の関係がとてもいいのです。やりとりはそっけないけれど、深いところでわかり合い、いたわり合っている。そんな人のつながりが心地いい。自分をつなぎとめるものがある場所を見つけた人たちのその後の物語も読んでみたい。そして、自分の本当の居場所を見つけたくなる一冊です。
*「ラインのふたり」は以前ご紹介した人気女性作家のアンソロジー『女ともだち』にも収録されています。
ラブ&ピースな一日を。
Love, まっこリ〜ナ
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