先生/小林弘幸(順天堂大学医学部附属 順天堂医院
総合診療科・病院管理学 教授)
腸内に炎症が起きている状態が「腸むくみ」
むくむのは顔や足ばかりだと思っていませんか? 自覚のない人がほとんどですが、腸もむくみやすいのです。そこで今回は、”腸むくみ”の正体を便秘改善のエキスパートであり、自律神経研究の第一人者でもある順天堂大学医学部教授・小林弘幸先生に伺いました。
食べ物に含まれる栄養は腸で吸収され、血液によって全身の細胞へと運ばれます。吸収されず、残ったカスが便となって排泄されるのですが、腸が伸び縮みを繰り返す”ぜん動運動”が低下していると、残ったカスは腸内を移動することができず、宿便となって腸内に留まってしまうのです。
ではなぜ、ぜん動運動が低下してしまうのでしょうか。腸はリラックスモードになると優位になる副交感神経によって収縮しているため、興奮・戦闘モードの交感神経が優位になっている状態では働かないのです。自律神経のバランスは、ストレスを感じるだけでもあっという間に乱れます。
ということは、ストレス社会に生きる私たちの腸は、ぜん動運動が低下しやすいということ。腸が動かなくなれば老廃物は停滞し、炎症を起こします。この状態が、腸むくみです。毎日排便があっても腸内環境が悪ければ悪玉菌が増え、腸は炎症を起こすため、便秘ではなくても腸がむくんでいる可能性はあります。
便を見れば腸内環境がわかる
私たちの腸内には、総量約1.5キロ、500〜1000兆個の腸内細菌がすんでいると言われています。
腸内細菌は消化吸収を助けるなど、腸に対して有益な働きをする”善玉菌”、炎症を起こしたり、発がん性の物質をつくるなど悪影響を及ぼす”悪玉菌”、強いほうに加勢する”日和見菌”の3つに分けられ、その比率は2:1:7(理想の腸内環境は、善玉菌30%、悪玉菌10%、日和見菌50〜60%)。
善玉菌と悪玉菌のどちらが優位になっているかを見分ける簡単な方法が、便のチェックです。
<善玉菌が多い便>
・固すぎず、柔らかすぎず、適度な水分を含んでいる
・黄色か茶色
・バナナ状
<悪玉菌が多い便>
・下痢もしくはコロコロ丸くて硬い
・黒っぽい色
腸の動きが悪い、腸内環境が乱れている、このふたつが腸むくみの原因ですが、吹き出物やからだのだるさなど、何らかの症状が現れている人は、腸の炎症はかなり進行していると思っていいでしょう。そうなる前に、日々便をチェックして腸内環境の現状を把握しておくことが、腸むくみ改善の第一歩なのです。
—-毎日お通じがあっても、
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小林弘幸
順天堂大学医学部附属 順天堂医院 総合診療科・病院管理学 教授。日本初の便秘外来を開設。また、自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手のパフォーマンス向上指導も行っている。『人生を決めるのは脳が1割、腸が9割!「むくみ腸」を治せば仕事も恋愛もうまく行く』(講談社+α新書)、『自律神経が整う時間コントロール術』(小学館)など著書多数
取材・文/山崎潤子(ライター)
イラスト/はまだなぎさ
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