プレゼンター/山田朱織(16号整形外科 院長)
取材・文/山崎潤子(ライター)
—-多くの場合、首こりと肩こりを分けて考えているかもしれませんが、首がこっていると肩もこっているし、その逆も然り。「肩こりの原因の8~9割は首こりで、首の神経を圧迫しているのがからだに合っていない枕なのです」と話すのは、16号整形外科の山田朱織先生。首こりと枕の関係を伺いました。
睡眠中のベストな首の角度は約15度
首の骨=頸椎(けいつい)は、7つの椎骨で構成されています。頸椎には脊髄(せきずい)と呼ばれる太い神経の束が通っていて、脊髄からさらに脳と全身を結ぶ脊髄神経が出ています。脊髄神経は第1から第8頸神経まであり、各頸神経ごとに支配する領域が決まっているのですが、その領域は頭蓋骨~首~背中、肩、腕と広範囲。
肩こりは、肩関節周辺で起こるこりや痛みのことだと思いがちですが、8~9割は首の領域に原因と痛みがあるのです。つまり、肩こりだと思っている痛みのほとんどは、首こりなのです。
日中、上を向く、あるいは下を向いた状態が長時間続くと、首がこりますよね。寝ているときも同じで、枕が高くても低くても首は湾曲するため、脊髄の根元を傷つけます。
本来、寝るときだけが唯一、頭の重みから解放されて首を休めることができるのに、合わない枕を使っているから、首&肩のこりが助長されてしまうのです。それなら枕は使わなければいい、と思うかもしれませんが、枕なしもNG。
当院の研究で、脊髄の根元が傷つかない首の角度は0度ではなく、約15度だということがわかりました。枕なしの0度の場合、肩幅があることによって寝返りがスムーズにうてず、仰向けと横向きで首の角度が変わってしまうのです。
途中で角度が変わることが、首こりを招く最大の原因。そこで、約15度をキープしたままスムーズに寝返りをうてるものを、と開発したのが手づくりの玄関マット枕です。
からだに合っていることが重要なので、好みは排除
枕で最も大切なのは、体格(身長、体重、肩幅)に合っているかどうか。だから高い、低い、硬い、柔らかいといった好みは捨ててください。なぜ高すぎるのがダメなのかというと、気道がふさがれて呼吸が苦しくなり、いびきをかきやすくなるからです。低すぎても同じことが起こります。
からだに合う枕が見つからない人は、最終的に枕を使わないという選択肢にたどり着く傾向があるのですが、枕なしは先ほどもお話したとおり、肩が邪魔で寝返りをスムーズにうてません。そうなると、最終的にうつ伏せになって寝るケースが多いんですね。うつ伏せは首をひねるので、首には最悪の姿勢といってもいいでしょう。
「寝違え」は医学的用語ではないのですが、首を後方に回したとき、鎖骨から耳の後ろに浮き出る胸鎖乳突筋を痛めた状態を一般的にさします。これは私の分析ですが、筋違いが起こる人の大半は枕が合っていないため、睡眠中に脊髄が炎症を起こしていると考えられます。
頭の重さは4~5kgあり、7cm前傾すると首にかかる負担は20kgにもなると言われています。寝違えた状態で首を動かせば、もっと痛めてしまう可能性も。そうならないためにも、自分の体格に合った枕を選ぶ必要があるのです。
—-羽毛、低反発、そばがら…、さまざまなタイプの枕を試したけれど、どれも期待したほど首&肩のこりが解消されなかったのは、高さと硬さが合っていなかったからなのですね。
毎日6時間前後寝ているわけですから、いい姿勢で寝るか、台無しの姿勢で寝るかが、こりや痛みを改善する分かれ道になるのも納得です。次回は、からだに合った枕のつくり方についてお話しします。
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山田朱織(16号整形外科 院長)
枕と睡眠を専門とする整形外科、16号整形外科院長。医学博士。2003年に睡眠姿勢の研究、及び整形外科枕開発を目的とした(株)山田朱織枕研究所を設立。主な著書に『頸椎症、首こり、肩こりに! 山田朱織のオリジナル首枕 Plus』(主婦の友社)、『首姿勢を変えると痛みが消える』(フォレスト出版)などがある。