(この物語は…毎朝のヨガ習慣をはじめてから108日目を迎えた、ヨガが好きなOL 紗季に、久々に起こる、恋と仕事の変化。朝のヨガスタジオで巻き起こる男女のハートフルなラブストーリー。小説のストーリーに合わせ、毎週おすすめヨガポーズをご紹介します。
最終週であるWeek 8は、再び、主人公紗季の視点でストーリーが展開します!)
Vol.50 Week 8 「本当にたいせつなものは」 (1)マイペースを守れるのは相手を思うから
優斗さんとの付き合いは、順調だった。
これが30代の恋愛なのだろうか。
何事も成長すると失敗しなくなるのだろうか。拍子抜けするほど、痛みがなくて、穏やかで。
20代は仕事で結果を出すことに集中していた。経験がない癖に、できる人間だと思われたくて。
月のものが遅れたり、職場で倒れたりっていう先輩の話を聞けばきくほど、逆に早く成果をあげなくてはと焦った。
真治との恋愛中は、少し溺れかかったけれど、すぐにその怖さに気付いた。自分を持っていなくては、この関係は終わってしまう。だから、良い関係を保つために、自分がしっかりしなくてはを気持ちを入れ替えた。
わたしは、女としてだけではなく、同じく挑戦する同士としても、受け入れられていたと思っていた。
もちろん真治が何かをなしたいときは、甲斐甲斐しく支えて、内助の功も果たしたい。
その時々に必要な女性に七変化できたらいいと。でも、そんなことができるひとはいないのだ。
最近になって分かったこと、ベースは、女性らしくおおらかさを持っていること、一緒に暮らすためには、そのことが重要であると。
優斗さんとのゆっくりとした時間の中では、わたしがすべてをしてあげたい、わたしのすべてを知っていてもらわなくてはいけない、という脅迫めいた感覚がなくなった。
毎朝、ヨガスタジオに行って、気心しれたメンバーと楽しくヨガをして、恋人と2人で朝ご飯を食べる。
そんなささやかな幸せが長く続けばいいなと思った。
いま過ごす時間が、温かいように。
「紗季は、今日の夜どうしてる?」
「ジャパンエキスポが終わるまでは忙しいの、ごめんね」
「それって桜井さんとのプロジェクト?」
「そうそう、何気にしてるのよ」
優斗は意外にも嫉妬心が強い。かわいくて、笑ってしまう。
そう、優斗とはペースを守れる。
絶対会えないこともないけれど、しっかり睡眠をとって、朝ヨガにいって仕事をする。ベストパフォーマンスを毎日出せる生活を送りたい。
だから、無理をしない。
真治といるときは、オールインワンの関係だった。真治にすべてを求めて、自分で窮屈にしていた。いまとなれば、それも少し笑ってしまうほどだ。
大人だと思っていた自分が、一番幼かった。
でもそれだけ熱く取り組める時代があったことを、きちんと評価してあげようと思える余裕ができた。
(つづく)
今週のおすすめヨガ「ランジのポーズ(ひねり)」
Week 8のおすすめは「ランジのポーズ(ひねり)」。
ランジのポーズにひねりを加えたもの。ひねるポーズは内臓にほどよい刺激を与えます。深い呼吸とともに、身体を下腹部からゆっくりひねりましょう。
安定感を欠いたり、内臓が重かったり、さまざまな気付きから、自分の身体の状態が分かるようになりますよ。
「ランジのポーズ(ひねり)」の流れ
- 両手を床につき、片足をその両手の間、もう一方の足は、大きく後ろに。後ろの足のかかとで後方を押します。
- 状態をひねります。前方の足の太股の外側に、反対側のひじで押さえるようにひねります。深い呼吸を忘れずに。
(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)
★この物語の登場人物
新城紗季(しんじょうさき/30歳)プロダクトブランド販売会社のマーケティング部につとめる。この物語の主人公。
アレクサンドル・ハミルトン(アレックス)(38歳)フランス系アメリカ人。ヨガスタジオを経営。
相場優斗(あいばゆうと/38歳)外資系投資銀行の行員。
桜井真治(さくらいしんじ/35歳)紗季と同じ会社でニューヨーク店勤務。紗季の元恋人。
東谷しおり(ひがしやしおり/25歳)ヨガ仲間のひとりで、紗季の会社の事務系OL。