(この物語は…毎朝のヨガ習慣をはじめてから108日目を迎えた、ヨガが好きなOL 紗季に、久々に起こる、恋と仕事の変化。朝のヨガスタジオで巻き起こる男女のハートフルなラブストーリー。小説のストーリーに合わせ、毎週おすすめヨガポーズをご紹介します。
Week 5は、主人公である紗季との交際をスタートさせた優斗の視点でストーリーが展開します!)
Vol.30 Week 5 「39歳の初恋」 (2)女のひとはずるい
相場(あいば)という姓の持つ運命か、はたまた遺伝か父親が立派だったからなのか、父親と同じく投資銀行のディーラーの職を得た。後に、投資銀行内でシステム部に異動し、いまも変わらない。
孤独の運命。なんとなく、自分のそれを理解したのは、20歳くらいのときか。
幼い頃は恵まれていたと思う。父親の仕事の都合で、10歳までロンドンで育ち、日本の大学を出た。
日本の大学にいる頃、海外にいる父親の訃報が届いた。
あの時の僕ののん気さと、慌てふためき取り乱した母親の声を未だに忘れることはできない。
あまりに突然のことに、僕はびっくりして、初めてひとの人生が儚いことを思い知った。
しかし、本当に辛い日々の始まりは、母親を日本に連れ帰ってからだった。
母は父に依存した生活をしていたため、父のいない生活に耐えかね、うつ病を発症した。
いまの僕ならもう少し上手くやれるだろうが、当時の僕は、心の病を持つ母親を背負うには幼すぎた。
恵まれた主婦が一転して自立することができなくなる様に、言葉を選ばずに表現すれば、幻滅した。いま思えば、ひとりっ子であれば、優しくなれたかもしれない。
5つ上の姉は、饒舌に対策を話してはくれたが、その内容はいつも僕が上手くやる方法だった。彼女はすでにカナダに嫁いでおり、海外生活が長いはずの母は、父に頼りっぱなしのために最低限の英語すらできず、僕が引き取るしかなかった。
「女のひとはずるい」
誰かにすがって生き、問題に直面したときに逃げることができるのだ、と怒りを感じてしまった。本当に僕は幼かった。
そうして、僕も逃げた。
父の生命保険をすべて使い、母に母の姉の近くのマンションを買い与えた。残りの金額を伯母に渡し、何かあったときに面倒をみてもらえるように。
僕は、日本の大学を卒業した後タイの大学に留学し、アジアは10カ国ほど回って、生まれ育ったロンドンで就職した。
とにかく何もかもから逃げたかった。
その頃から、女の子にも情熱を注がなくなってしまった。寂しさを癒し欲求を満たしてもらうためだけの、テンポラリのガールフレンドはいたが、ステディな関係にならないように細心の注意を払った。
傷つけたくはなくてドライに扱うのに、そうすればそうするほど、女のひとは嫉妬に狂う。
きっと紗季にも、そういう一面があるはずだ。
(つづく)
今週のおすすめヨガ「チャイルドポーズ」
Week 5のおすすめは「チャイルドポーズ」。
ヨガでは、お休みや癒しのポーズとしても使われます。それだけ、リラックスすることができるということです。ただ単なるお休みではなく、呼吸を落ち着かせ、内臓を刺激し、力を抜くことができます。
出来るだけ、背中を緩めて自由な背骨を作り、呼吸に注目します。呼吸が整うことで、さらに骨・筋肉ともに動かすことができ、自由な上体を作ることができますよ!苦しい時、休みたい時、朝起きるときにおすすめ。
「チャイルドポーズ」の流れ
- 膝をたて、両膝に均等に体重がかかるようにしまっすぐ立つ。また、足先の親指と親指を重ね合わせておく。
- 両かかとにおしりをおとし、上体はリラックス。この時腰が後に落ちてしまわないように、注意しましょう。息を吐きながら、ゆっくり膝を床の方へ向かって開いていきます。
- 息を吐きながら、上体を前傾します。なるべく前方へ手をひっぱります。
(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)
★この物語の登場人物
新城紗季(しんじょうさき/30歳)プロダクトブランド販売会社のマーケティング部につとめる。この物語の主人公。
アレクサンドル・ハミルトン(アレックス)(38歳)フランス系アメリカ人。ヨガスタジオを経営。
相場優斗(あいばゆうと/38歳)外資系投資銀行の行員。
桜井真治(さくらいしんじ/35歳)紗季と同じ会社でニューヨーク店勤務。紗季の元恋人。
東谷しおり(ひがしやしおり/25歳)ヨガ仲間のひとりで、紗季の会社の事務系OL。