(この物語は…毎朝のヨガ習慣をはじめてから108日目を迎えた、ヨガが好きなOL 紗季に、久々に起こる、恋と仕事の変化。朝のヨガスタジオで巻き起こる男女のハートフルなラブストーリー。小説のストーリーに合わせ、毎週おすすめヨガポーズをご紹介します。
Week 4は、ふたたび主人公である紗季の視点でストーリーが展開します!)
Vol.23 Week 4 「朝ごはんでデートを」 (2)お母さんの旧姓は?
母が「誰かしらね、新年に」と予定にない来客だということを知らしめた。
紗季と大きな声で呼ばれ、わたしは、玄関まで降りていった。
息を飲んだ。
「どうして・・・?」
「朝ヨガ後まで待てなくて」
真治の声に、わたしの決断がもろくも崩れさるのを感じていた。
それから急いで着替えて、弟の車を借りて、わたしたちは地元のショッピングセンターに出かけた。もともとカフェなんてない田舎街だが、正月に空いているところといったら、そこしかない。
2年前は、ニューヨークのカフェにいたわたしたちが、地元のフードコートでミニソフトとコーヒーゼリーを頼んでいるだなんて、少し笑ってしまう。
わたしたちは、ゆっくり話をした。ニューヨークで一緒に暮らしていたときですら、ゆっくり話なんてしたことがなかったかもしれない。
今日の真治は聞いてばかりだ。
「紗季はアイスよりソフトクリームが好きなの?」
「地元の雑煮の具は?」
「高校生のときのアルバイトは?」
ずっとひっきりなしに。
他人に興味を示さない真治が、ことあるごとに質問するので、「そういえば、お母さんの旧姓は?」と聞かれたときに、笑ってしまった。「パスワードのため?」って突っ込んで。
真治がわたしに向き合おうとしてくれていることは、嬉しかった。
ニューヨークにいた頃のコンペの話も、真治からもう一度聞かされた。
いまとなってはもうどうでもいいことで、いま同じことが起きてもなんてことはないかもしれない。
でも、あの時、一生懸命だったわたしにとって、何もかもが全部なくなってしまうかのような絶望感に襲われたのだ。それにその事実よりも、わたしは真治が言い放った言葉を忘れることができないでいた。
その傷は、自分が思っていたよりも深かった。
その傷を自分で癒してきた。2年かけて。
でもいま、楽しそうにコーヒーゼリーを食べて、わたしと話している真治を見たら、心臓がきゅっと締め付けられるのだ。
(つづく)
今週のおすすめヨガ「さかなのポーズ」
Week 4のおすすめは「さかなのポーズ」。
胸を開き、頭皮を刺激するポーズで、固くなりがちな背中を動かし、胸を開くことで呼吸がとても楽になるでしょう。冬の間は、頭皮も乾燥したり、うつむき癖でひっぱられたり、酷使しています。
明日に向かう活力をもらえるポーズです。
「さかなのポーズ」の流れ
- 足を腰幅に開き、全身の重みを床に素直に落とします。
- 手を組み、お尻の下におきます。同時に肩も背中の下にしまうイメージで、内側に入れます。
- 胸を天井からつられているイメージで、引っ張り上げます。最後に頭頂部を床につけ静止。
(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)
★この物語の登場人物
新城紗季(しんじょうさき/30歳)プロダクトブランド販売会社のマーケティング部につとめる。この物語の主人公。
アレクサンドル・ハミルトン(アレックス)(38歳)フランス系アメリカ人。ヨガスタジオを経営。
相場優斗(あいばゆうと/38歳)外資系投資銀行の行員。
桜井真治(さくらいしんじ/35歳)紗季と同じ会社でニューヨーク店勤務。紗季の元恋人。
東谷しおり(ひがしやしおり/25歳)ヨガ仲間のひとりで、紗季の会社の事務系OL。