「来てくれたんだ」
え?と驚く裕也がそこにいた。
どうやら私のメッセージを読んで来たわけじゃなかったらしい。少し気が抜けて、裕也の前の席の背もたれを引いた瞬間。
裕也がぽつりと言う。
「これからいつも一緒にいてもらえないかな」
信じられない言葉が飛んできて、座るタイミングをなくしてしまった。
「紗江のこと、いいの?」
裕也は怪訝そうな表情で
「紗江?なんで?」
私は混乱したまま、紗江からメッセージが届く
「奈美、気持ち伝えるのよ。紗江の女優道場でした。
奈美の魅力必ず届いているから ものすごくキレイになったよ 自信もって。
奈美が全然気付かないから 少しはっぱかけてやった」
力が抜けて、笑いながら泣いた。
1週間後———。
ドルフィンのカウンター席にいる私たち。少し緩んで、1kg増えてしまったけど。
由加利からは、ステーキハウスへの招待券が二枚送られてきた。
安子からはジンジャークッキーとともに手紙が届いた。
ダイエットもトキメキも続かせるのは努力が必要よと。
「おんな友達もね」
私は、ソーダ水の泡がはじけきってしまわないように、一気に飲み干した。
終わり
(この小説の連載は今回で終了です。毎日お読みいただき、ありがとうございました!)
物語の登場人物
佐藤奈美(30)特許取得を専門とする弁理士事務所に勤める事務員。
結城紗江(30)中堅劇団の舞台女優。奈美と大学サークルの同期。
森野由加利(30)投資銀行に勤めるキャリアウーマン。奈美と大学サークルの同期。
近藤安子(30)専業主婦。一児の母。奈美と大学サークルの同期。
遠野裕也(30)紗江の大学時代の恋人。
伊藤慶太(34)奈美の行きつけの美容室のスタイリスト。