大人になったフリは、うまい。
こんな感じの回答を期待してるよね?
って確信犯。
めざましのアプリをセットする。
毎日ちゃんとアラームの曲を聞くって決めたのだから。
言うことと言わないことのバランス。
自分がぶれないように、そのバランスを保つよう意識している。もう大人だから。
でも、本当は保ててなんかいないと気付いている。
バランスを気にしているってことは、自分がふらついているってことだ。
次の日。
起きたときには、めざましのPUCH通知のポップアップがいくつも、画面に表示されていた。
いつか、朝起きるのが楽しみな毎日がやってくるはず。
私には、わだかまりが残ったまま、木曜日がやってきた。
私と雪乃は最初に待ち合わせて2人で先に乾杯。
ガラっと飲み屋のドアの音がするたび雪乃が反応するのが分かる。
同時に、私の心は沈んでいく。
5回目のガラっという音の後、少し赤らんだ顔の藤井君が入って来た。
やっぱり格好いい。雪乃はどんな顔をしているのだろう。
「お待たせ!久しぶり」
藤井君は顔色ひとつ変えず、私たち両方を見た。
「雪乃も立川もほんっと変わんないな」
雪乃・・・
私がびくっとしてしまったことに、雪乃は気付いただろうか。
(この小説は、毎日更新です。続きはまた明日!)
物語の登場人物
立川萌乃(もえの) 28歳
静岡出身。銀行の一般職。趣味で、フラワーアレンジメントをならう。早起きできる朝美人に憧れている。
新城雪乃(ゆきの) 28歳
萌乃と同じ高校時代からの友人。なんでも出来る格好いい人物として萌乃からは頼りにされている。
藤井倫太郎(りんたろう)28歳
萌乃、雪乃と同じ高校のサッカー部出身で東京の大学へ進み、留学。外資系投資銀行につとめるいわゆるエリート。
木村ことみ 28歳
萌乃の同期で、同じ支店にずっと勤めている。常識人であり現実主義者。
柳原誠士(せいじ)28歳
萌乃とことみの同期入社である、総合職の銀行マン。
近藤裕太(ゆうた)24歳
萌乃がフラワーアレンジメントの教室の隣にあるパーソナルトレーニングスタジオのトレーナー。