朝読書におすすめの本をご紹介する『まっこリ~ナのCafe BonBon』。小説やエッセイ、暮らしや料理の本など心に効く本をセレクトしています。
今日の「まっこリ~ナのカフェボンボン」の本棚は、井上荒野の小説『ママがやった』。
母親が父親を手にかけた。そこから始まる家族の物語。8つのストーリーから、さまざまな愛かたちが見えてきます。
『ママがやった』
著者:井上荒野
出版社:文藝春秋
ママがやった。母親が父親を殺してしまった。母親の百々子が営む居酒屋に、知らせを聞いた子どもたちが集まっているのだけれど、誰もあまり驚いている様子じゃない。淡々と経緯を語る母親も含めて。昼ご飯を食べながら、まるで花見の相談でもするように殺人隠蔽の話し合いをしているのです。「ちょっと買い物してきて頂戴。ブルーシートが必要なのよ」——。
ママは79歳。パパは72歳。母親より7歳年下で、愛人がいた父親。でもそれは最近始まったことではないのに、なぜいまになって。そう思うけれど、夫婦の本当の関係なんて誰にもわからない。百々子は夫を手にかけた理由を語りません。そこが物語のカギなのだと思います。
8つの連作短編には、過去半世紀にわたる家族の物語が、それぞれの視点で描かれています。「ママがやった」の前につくのは、とうとうなのか、やっぱりなのか。夫は妻を愛していたのか。百々子に予感はあったのか。
家族だから夫婦だからこそ知りたくない。目をそむけていたことがふいに露わになったとき、日常はあっさり崩れてしまう。それでも、居酒屋の客席で家族は昼食を食べ続けている。母親の作った筍ごはんと姫皮の味噌汁と玉子焼き。変わらぬ日常がいまもそこにあるかのように。不穏な気配と平穏が入り混じる、たまらなく魅力的な物語にしびれます。
ラブ&ピースな一日を。
Love, まっこリ〜ナ
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