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何気ない日常が愛おしい。ささやかな幸せを大切にしたくなる本3選

 

朝読書におすすめの本をご紹介する『まっこリ~ナのCafe BonBon』。小説やエッセイ、暮らしや料理の本など心に効く本をセレクトしています。

今日の「まっこリ~ナのカフェボンボン」の本棚は、ささやかな幸せを大切にしたくなる本

日常のほんの小さな出来事が、ささやかな幸せのありかを教えてくれる。ちょっと憂鬱なとき、くたびれてしまったとき、孤独がつらいとき、何気ない幸せに気づかせてくれる本を選びました。大変な毎日が続きますが、皆様も読書でひと息ついてくださいね。

落ち込んだ日のスープ。

人気料理家として活躍する高山なおみが、料理家への道を歩みはじめた頃につづったエッセイ集。日記から生まれたレシピも付いています。

「ずいぶんと濃い毎日を生きてしまったようなのです」三十代の日々のことを、著者はこんなふうにふりかえる。上京したての頃、ひとり暮らしの部屋で本格的なカレーを作った。小さな台所で半日煮込んだチキンカレーはおいしかったけれど、ひどくさびしかった。風邪で寝込んだある日、子どもの頃の夢を見た高山さんは、あたたかい安心に包まれて、もう私はなんにもいらないと思う。本も料理も音楽もなんにも。

ひりひりするような孤独と心の痛みが、濃厚な料理の匂いと湯気に溶けていく。ある憂鬱な雨の日のレシピは「落ち込んだ日のスープ」。心をあたためてくれるスープを熱いうちに。


帰ってから、お腹がすいてもいいようにと思ったのだ。
著者:高山なおみ
出版社:文藝春秋

バスにゆられて。

じっと窓の外を眺めながら、泣きそうな心を抱えている人もいるかもしれない。バスといっしょに揺れる気持ちを、石田千が鮮やかに描き出す。一番後ろの席で涙が止まらなくなったひと、「あせっても、しかたわないわ」と降車ボタンを押すひと。ゆっくりと流れる車窓からの風景が乗客をやさしく包み込みます。

さまざまな季節、いろいろな場所を走る路線バスの乗客をめぐる二十篇。私がとくに好きなのは、お持ち帰りのカレーを持った男が乗ったバスの話「スパイス国行き」。バスに漂うカレーの匂いに、みんなのカレーへの熱い想いが呼び覚まされて……。バスとカレーが巻き起こすちょっと楽しいハプニングです。心にやさしい短篇集をどうぞ。


バスを待って
著者:石田千
出版社:小学館

ジャージの二人が山荘で。

「つれてってよ。今、無職だし。暇だし。手伝うよ、いろいろ」そう言って、「僕」は父親の「一人避暑」についてきた。長嶋有が北軽井沢の古い山荘を舞台に、失業中の僕とカメラマンの父が過ごす日々を描きます。

山荘暮らしがはじまっても、僕の心を占めているのは預金通帳の残高と浮気中の妻のこと。「経済活動からも夫婦生活からもドロップアウトしてしまうならば、せめて薪ぐらいは割れるようになろう」と自嘲気味に思うけれど、いざ薪で焚いた風呂に浸かれば、悲しみにぼせてしまうのだ。

そんな二人が山荘で着るのがジャージの上下。夏の終わりの山荘暮らしはしょぼくれていて、洒落た雰囲気はみじんもないのだけれど、悶々とする僕も飄々としている父も、本当は心に熱いものをもっている人のような気がします。そこがきっとこの父と息子の似ているところで素敵なところ、だから彼らを好きになってしまう。翌年の山荘行きを描いた『ジャージの三人』も収録しています。


ジャージの二人
著者:長嶋有
出版社:集英社

くわしくはこちらの記事をどうぞ。
『帰ってから、お腹がすいてもいいようにと思ったのだ。』
『バスを待って』
『ジャージの二人』

ラブ&ピースな一日を。
Love, まっこリ〜ナ

「まっこリ~ナのカフェボンボン」を読んでくださってありがとうございます。「カフェボンボン」が心ときめく本との出会いの場となりますように。

*朝読書のすすめ『まっこリ~ナのCafe BonBon』連載一覧はこちらです。
https://asajikan.jp/topics/cafebonbon/

朝読書のすすめ『まっこリ~ナのCafe BonBon』はこちら>>

 

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小説から絵本まで、編集者が選ぶ”朝読書”におすすめの1冊
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まっこリ〜ナ

編集者・ライター

出版社勤務を経てフリーランスに。図鑑や写真集、子どもの本や雑誌などの編集に携わる。本がくれる愛のチカラを糧に生きる日々。いちばん好きな本の主人公は長くつ下のピッピ。
趣味は草花園芸、編み物、ランニング、スポーツ観戦。

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