朝読書におすすめの本をご紹介する『まっこリ~ナのCafe BonBon』。小説やエッセイ、暮らしや料理の本など心に効く本をセレクトしています。
今日の「まっこリ~ナのカフェボンボン」の本棚は、『ジャージの二人』。
作家・長嶋有が北軽井沢の古い山荘を舞台に、失業中の「僕」とカメラマンの父が過ごす日々を描きます。疲れているとき、なんにもやる気が出ないとき、心に効く小説です。
『ジャージの二人』
著者:長嶋有
出版社:集英社
「つれてってよ。今、無職だし。暇だし。手伝うよ、いろいろ」そう言って、僕は父の「一人避暑」についてきた。結婚三度目の父もどうやら問題を抱えているみたいだし、最近はあまり仕事もしていなさそう。
山荘暮らしがはじまっても、僕の心を占めているのは預金通帳の残高と浮気中の妻のこと。「経済活動からも夫婦生活からもドロップアウトしてしまうならば、せめて薪ぐらいは割れるようになろう」と自嘲気味に思うけれど、いざ薪で焚いた風呂に浸かれば、悲しみにぼせてしまうのだ。
そんな二人が山荘で着るのがジャージの上下。胸には小学校の名前が入ったワッペンがついている。夏の終わりの山荘暮らしはちょっとしょぼくれていて、洒落た雰囲気はみじんもないのです。
山荘で悩みを抱えて悶々とする僕。そして飄々としている父もまた、本当は心に熱いものをもっている人のような気がします。そこがきっとこの父と息子の似ているところで素敵なところ、だから彼らを好きになってしまう。ジャージの二人だけじゃない、ハスキー犬のミロもたまらなく愛おしくなりました。夜の東所沢駅前からはじまるロードムービーのような出だしも好き。
翌年の山荘行きを描いた『ジャージの三人』も収録しています。二人が三人になって、山荘暮らしが明るく色づきます。表紙カバーの印象的な絵は安野モヨコさん。休日の読書にぴったりの一冊をどうぞ。
ラブ&ピースな一日を。
Love, まっこリ〜ナ
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