おはようございます。料理家のまきあやこです。
この連載『本と映画と朝ごはん。』では、朝におすすめの本や映画、そして、一緒に楽しみたい簡単朝ごはんレシピをお届けしています。
自分の視点が変わる一冊!エッセイ『東京日記』
先日、仲良くさせて頂いている校正者の牟田都子さんが『校正者の日記 二〇一九年』という、2019年の一年間をまとめた日記の本を自費出版されました。私はその本を読んで初めて、「日記」という形の本を読むたのしみを知りました。
探してみると「日記本」というのは新旧問わず、とてもたくさんあって、どれもこれもなかなか興味深いものばかり。
今月は、そんなたくさんある日記本の中から、(こちらも牟田さんのおすすめで手に取った)川上弘美さんのエッセイ『東京日記1+2』をご紹介します。
東京日記1+2 卵一個ぶんのお祝い。/ほかに踊りを知らない。 (集英社文庫)
日記本でありながら、フィクションとノンフィクションの境目が曖昧なこの本。現実をきっかけに起こる、著者の脳内日記、という感じでしょうか。ふと心に湧き上がる、面白かったり不思議だったり、大切だったり切なかったり、不安だったりじんわりだったり幸せだったり、がファンジーを交えて、その日の日記として書かれているのかもしれません。
日記の本のおもしろいところは、それを読むことで、自分の日常に対する視点が少し変わるところ。著者の日常を眺める視点を通して、自分の日常や、自分自身を振り返ってみると、桜に、春の風に、八百屋の店先の野菜に、街ですれ違った人にも、ファンタジーを喚起するきっかけは、私のいつもの日常の、そこかしこにあるんだな、と思うのです。
そうすると、日常は何だかいつもより、魔法を秘めているように、ちょっと魅力的に、見えてくる気がします。
朝読書のおともに♪春らしい「ホタルイカと豆の炊き込みご飯」
『東京日記1+2』には、食べ物にまつわる色々や、お料理の場面もたくさんあるので、読んでいるとお腹が空いてお料理がしたくなる本でもあります。
私は、春めいてきて、スーパーに豆が並びはじめると、とてもそわそわした気持ちになります。なぜかお豆をむかずに、春をやり過ごすことができません。笑 もし私が日記を書くなら、毎年4月の日記には、「豆をむく」という1日があるような気がします。例えば「4月◯日 スーパーに並ぶ、お豆たちずらり。買って帰って、一心不乱に豆をむく。春、来りなば。」とか。笑
というわけで、今回はそんなお豆を使って、春らしいお豆とホタルイカの炊き込みご飯をご紹介。炊飯器を開けた時のほんのりピンクのご飯とやさしい緑で、幸せな気持ちになれる一品ですよ♪
<材料>
- 米 1合(150g)
- 出汁 200cc
- ボイルホタルイカ 10杯程度(手に入れば生のものを使うのもおすすめです!)
- お好みの豆 適量(今回はうすい豆15房分を使用。その他グリーンピースでも、そら豆でも◎)
- 塩 少々
- オリーブオイルはお好みで 小さじ1
<作り方>
お米を研いで、その他のすべての材料を入れて炊飯器にかける。
2) 炊き上がったらさっくりと混ぜて味見をして、塩が足りなかったら、加える。
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日記本のおもしろいところを、もうひとつあげるなら、それは「振り返ることができる」ということ。今日を終えた私の日記には、何が書き残されるんだろう。いつかその日記を振り返ったら、どんなことを思うだろう。そんな風に考えていると、さぁ、とりあえず、今日を生きよう、って、ほんの少しわくわくとしたような、肩の荷が下りたような気持ちになるのです。
春の、朝にぴったりな一冊。ぜひお手にとって見てください!もちろん、朝読書のお供には、春らしい炊き込みご飯をおすすめします♪
☆この連載は<毎月1回第4金曜日>更新です。次回、4月もどうぞお楽しみに!