朝読書におすすめの本をご紹介する『まっこリ~ナのCafe BonBon』。小説やエッセイ、暮らしや料理の本など心に効く本をセレクトしています。
今日の「まっこリ~ナのカフェボンボン」の本棚は、『浮遊霊ブラジル』。
人気作家・津村記久子の短編集が文庫化されました。幽霊が海外旅行をしたり地獄が何かと忙しかったり、津村記久子ワールド全開の7篇です。日常をぽーんと飛び越えた物語は、眠れない夜やさえない気分の時にオススメです。
『浮遊霊ブラジル』
著者:津村記久子
出版社:文藝春秋
なかなか眠れない夜、不思議の国を旅するように読む。するとこんな毎日も案外いいなあと思えてくる。
「地獄」という作品で、著者はまるで会社組織のような地獄を描く。主人公の女性「私」も親友のかよちゃんもすでに地獄の住人なのだけれど、この地獄が意外にゆるそうなところ。最初にふたりが各地獄への配属の列に並んだときにも、「列を仕切る鬼の鼻毛がものすごく出ている」なんて話で激しく盛り上がる。週替わりの試練プログラムのノルマをこなしながら、私はかよちゃんとメールのやりとりをする。鬼の不倫や左遷だってあるらしい。
表題作の「浮遊霊ブラジル」でもやっぱり主人公はすでに死んでいます。この世の人ではないと思いきや幽霊となって現世にとどまっている。生前楽しみにしていた海外旅行に未練を残していたんですね。なんとしても旅行をしたい幽霊が目的の地へ行こうと旅人にとり憑いて……。
こんな地獄もある、こんな旅のしかたもあるんだと愉快な気持ちになる。世界はいま見えているだけじゃない。ずっと遠くまで広がっているのかも。そのへんの道も思いもよらない場所へつながっているのかな。そしてきっと、たどり着く先はそんなに悪いとこじゃない。
表題作をはじめ「給水塔と亀」「アイトール・ベラスコの新しい妻」など7篇を収録しています。イマジネーション豊かでチャーミングな短編集をどうぞ。
ラブ&ピースな一日を。
Love, まっこリ〜ナ
「まっこリ~ナのカフェボンボン」を読んでくださってありがとうございます。「カフェボンボン」が心ときめく本との出会いの場となりますように。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
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