朝読書におすすめの本をご紹介する『まっこリ~ナのCafe BonBon』。小説やエッセイ、暮らしや料理の本など心に効く本をセレクトしています。
今日の「まっこリ~ナのカフェボンボン」の本棚は、『女の家』。
昭和三十六年に刊行された作家・日影丈吉の長編小説。銀座裏の町にある家を舞台にした女主人をめぐる物語です。
『女の家』
著者:日影丈吉
出版社:中央公論新社
女の家。謎めいたタイトルに魅かれます。家の女主人、折竹雪枝を彷彿とさせるカバーの絵にも。すぐに読んでみたいと思いました。女の家で一体何が起きていたのか、外からはうかがい知れないミステリアスな雰囲気が漂う小説です。
冬の夜、銀座の裏通りにある家でガスの漏出事故が起き、女主人の折竹雪枝が亡くなります。死の状況をめぐり、現場に駆けつけた刑事と女中の乃婦(のぶ)が交互に語り出し、雪枝が大会社の社長の愛人であったことや十一歳の一人息子がいること、息子の家庭教師が出入りしていたことなどが判明します。雪枝が社長の本妻公認であったこともわかってきます。
「かなり辛抱づよく世間を見てきたつもりである」という乃婦からは驚くような証言が。女の家のさまざまな秘密やタブーが明るみになります。家庭教師の若者が家族同然に毎日出入りし、風呂まで入っていたことも引っかかります。なんだか全然、平穏じゃなさそう。不可解な事件の真相は果たして……。
その家に住む者、出入りしていた者の思惑や心情が絡み合い、家の中はさぞ息苦しかったのではないかと想像してしまう。とくに家の内側から見た人間模様は複雑で奥行きあり、雪枝や乃婦の人生の哀しみが当時の銀座の風景とともに深い余韻を残します。女の家の表と裏。見てはいけないものを知ってしまったようで、心がざわついて仕方がない一冊です。
ラブ&ピースな一日を。
Love, まっこリ〜ナ
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