朝読書におすすめの本をご紹介する『まっこリ~ナのCafe BonBon』。小説やエッセイ、暮らしや料理の本など心に効く本をセレクトしています。
今日の「まっこリ~ナのカフェボンボン」の本棚は、『そこへ行くな』。
人気作家・井上荒野が平穏な日常のほころびや違和感を描く短篇集。じわっと怖い物語は夏の読書にもオススメです。
『そこへ行くな』
著者:井上荒野
出版社:集英社
平穏な日常が壊れたとき。あとから考えるとわかるのかな。あの瞬間が境目だったって。でも、それよりずっと前から小さな亀裂はあったはずだと思うのです。
本書で描かれるのは、平穏な毎日にふと違和感を感じ、その正体に引き寄せられてしまう人たちのこと。違和感のきっかけは、たとえば、やさしい夫への疑念、悪意に満ちた隣人たち。一度、その正体を知ったらもう元には戻れないとわかっていても目をそらせない。
私がとくに惹きつけられたのは、老人が多く住む古い団地に引っ越してきた若い夫婦を描く「団地」。結婚して三年の可南と彗は、穏やかな団地暮らしを気に入っていた。しかしある日、団地の講習会で編みぐるみの講師を引き受けたことをきっかけに、可南はさまざまな違和感を感じるように。「結構だことねえ。仲良しで」「お子さんがいるかどうか聞いちゃ失礼かねえ?」近所の老人たちからのぶしつけな言葉やあからさまな視線にとまどう可南。四六時中、夫婦の暮らしが監視されているような、この居心地の悪さ。芝生や公園の美しい団地ののどこかさがよけいに不気味に感じられるのです。
「遊園地」「サークル」「ベルモンドハイツ401」など7篇を収録しています。小さかったほころびはどんどん広がっていくんですよね。まわりの人を巻き込んで。じっとり絡め取られるような気配に満ちたストーリーをぜひ。
井上荒野さんの本、以前ご紹介したこちらもどうぞ。
*『綴られる愛人』
ラブ&ピースな一日を。
Love, まっこリ〜ナ
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