(この物語は…毎朝のヨガ習慣をはじめてから108日目を迎えた、ヨガが好きなOL 紗季に、久々に起こる、恋と仕事の変化。朝のヨガスタジオで巻き起こる男女のハートフルなラブストーリー。小説のストーリーに合わせ、毎週おすすめヨガポーズをご紹介します。
Week 4は、ふたたび主人公である紗季の視点でストーリーが展開します!)
Vol.27 Week 4 「朝ごはんでデートを」 (6)鼓動の早さは新しい恋のしるし?
と優斗さんに見つめられて、わたしは思わず
「よろしくお願いします」
と答えていた。そうだ、そのためにも、真治と決着をつけたんだった。
優斗さんが、ほっとした表情を見せた。これほどの人が、わたしにOKをもらうために、緊張していたと言うの?
「紗季は、気付かないなら気付かないままでいいんだけど、魅力的だから。仕込み結講ぬかりなくやったんだ。真治ってやつも、アレックスも、紗季に気があったんでしょ。気付かないふりして一気にいかないとと思って」
「けどもう決めたんだから、揺るがないように」
「え・・・」
そうして優斗さんは、わたしの頭をなでてすぐに、頬に手をあてる。
予期せぬことに顔が真っ赤になっていると自覚すると、さらに押さえられずに俯いた。
そしてあごを持ち上げられると、年甲斐にもなく肩をすくめてた。
久々にくる鼓動の早さに、息切れしかけた。なんたって、ヨガでいつも精神を落ち着かせ、ゆっくりとした呼吸を心がけているのだ。こんな時、ヨガの効果は発揮できない。
優斗さんの力強い目、仕掛けの早さと緻密さ。
わたしは、このひとにかけてみようって思った。自分を少し変えてくれるかもしれない。自分に少し自信が持てるようになるかもしれない。
そんな期待をするのは、ちょっと怖いのも知っている。好きになればなるほど、終わる時の傷は大きく、次に誰かを好きになるのが怖くなる。
次に、とか言ってる年じゃないのも知っている。もう!人生史上最速のタイミングにまだ自分がついていけなかった。
これが30代の恋愛なのかしら・・・?
急展開についていけず、結局しおりとの新年ランチもキャンセルして、机でおにぎりを頬張っていた。
そのとき目線の先に真治が入り込んできた。
「新城さん、13時からのミーティングだけどリスケOKかな?」
わたしはまだぼうっとしていた。
「朝一で会議キャンセルとリスケ依頼のメール出してるんだけど」
「すいません、いま」
誰も知らないことだろうけど、自分の中で人生史上最大の波乱の仕事初めの日。浮ついている自分が恥ずかしかった。よりによって、真治に仕事のミスを指摘されるとは情けない。
「新城さん、それと個人的な用件で、一昨日LINEしているんだけど、返信くれるとありがたい」
「わ、わかりました」
そういえば、キャロル・キングを聴きながら、優斗に返信したとき、真治からもメッセージがきていたことを思い出した。そのときは、何も見たくなかったのだ。
そうだ、あのキャロル・キングは優斗さんと聴くことになるのか。
違和感もなければ、しっくり感もなかった。プレーヤーを買うのはまた今度にしよう、なんとなくそう感じた。
わたしは、早速、会議の日程を変更し、おそるおそるLINEを開いた。
(つづく)
今週のおすすめヨガ「さかなのポーズ」
Week 4のおすすめは「さかなのポーズ」。
胸を開き、頭皮を刺激するポーズで、固くなりがちな背中を動かし、胸を開くことで呼吸がとても楽になるでしょう。冬の間は、頭皮も乾燥したり、うつむき癖でひっぱられたり、酷使しています。
明日に向かう活力をもらえるポーズです。
「さかなのポーズ」の流れ
- 足を腰幅に開き、全身の重みを床に素直に落とします。
- 手を組み、お尻の下におきます。同時に肩も背中の下にしまうイメージで、内側に入れます。
- 胸を天井からつられているイメージで、引っ張り上げます。最後に頭頂部を床につけ静止。
(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)
★この物語の登場人物
新城紗季(しんじょうさき/30歳)プロダクトブランド販売会社のマーケティング部につとめる。この物語の主人公。
アレクサンドル・ハミルトン(アレックス)(38歳)フランス系アメリカ人。ヨガスタジオを経営。
相場優斗(あいばゆうと/38歳)外資系投資銀行の行員。
桜井真治(さくらいしんじ/35歳)紗季と同じ会社でニューヨーク店勤務。紗季の元恋人。
東谷しおり(ひがしやしおり/25歳)ヨガ仲間のひとりで、紗季の会社の事務系OL。