(この物語は…毎朝のヨガ習慣をはじめてから108日目を迎えた、ヨガが好きなOL 紗季に、久々に起こる、恋と仕事の変化。朝のヨガスタジオで巻き起こる男女のハートフルなラブストーリー。小説のストーリーに合わせ、毎週おすすめヨガポーズをご紹介します。
Week 3は、紗季の元恋人である桜井真治の視点でストーリーが展開します!)
Vol.21 Week 3 「ニューヨークの真実」 (7)ヨガスタジオで会うんじゃなくて
そのままひとり酒を飲みながら夜を明かして35歳で初めて、初日の出を見た。
まいにち、朝はやってくる。
毎朝、どんな調子の時も、ヨガスタジオに通う紗季の気持ちを僕は知りたくなった。
毎朝、どんな調子の時も、隣に紗季がいる暮らしをしてみたくなった。
どうして紗季を好きになったのだろう。
いつも笑顔で、めちゃくちゃ下手な英語で切り込む紗季を、最初はどんくさい奴だと思った。いつの間にか、彼女がいるから交渉ごとが上手く進むようになった。
いまの紗季は違う。スマートになんだって切り抜ける。僕をもう必要としなくなったのに、一緒にいる関係はあるのだろうか。
気付けば、いつも与えられていた。
僕は紗季の好きなスウィーツの種類も、おでんの具も、珈琲の濃さもよく思い出せなかった。けど、あいつはいつも、「真治の好きな」って言っていた。
僕は、事細かに好きなものを解説していないのに、あいつはなんで分かったんだろう。
紗季のことばかり考えていたら、すぐにでも会いたくなった。
ニューヨークで酷い別れ方をしたのは、紗季が温めていた父親の会社の技術を使った新ブランドの立ち上げを企画し、社内コンペに挑戦して落選した後だ。
僕は、紗季のサポートをしていた。僕らは2人同じ方向性を見ていた。
しかしそれは、出来レースだった。
紗季は、僕がコンペで別のアイデアに加担したことを噂で聞きつけ、なじった。僕は必死だった。紗季も会社も失いたくはなかったが、そのとき一番失いたくないのは、自分だったのだ。
それだけではない。
2人は同じ方向を見ていたのではなくて、紗季だけがきちんと一点を見据えていたということに、紗季だけが気付いていたのだろう。
あのとき僕は言ったのだ「これだけサポートしてやったじゃないか」
コンペに落ちたことよりも、きっとこの言葉に紗季は打ち拉がれたのだと今ならはっきり分かる。
紗季は、日本での空きポストがあってすぐに帰国した。僕はまだ若くて、ひとりで大丈夫だと思っていた。そして僕は、もっと情けないことに気付いた。取り乱すほどに情熱を持てる紗季に嫉妬していたのだ。
2年間会いにいこうとしなかったのは、情けないその気持ちを愛情だけに変化させることができなかったからだ。
僕はいてもたってもいられなくなり、次の日の朝、同じ新潟の紗季の実家へ向かった。
(Week 4 へつづく)
今週のおすすめヨガ「三角のポーズ」
Week 3のおすすめ「三角のポーズ」も、先週の「木のポーズ」同様、ヨガの代表的なポーズ。
腕から体側、脚までをバランスよく伸ばし、大地を踏みしめる力強いポーズ。滞りがちな股関節周辺の関節の動きや筋肉を動かし、リンパの流れや血流も良くします。
股関節の位置が上手くはまると、きつさがなくなり、関節への心地よい刺激で、身体の中がぽかぽかしてきます。
「三角のポーズ」の流れ
- 足裏全体を床に根をはるようにイメージし、ひざ頭、うちももを引き上げ、骨盤まで足の裏からの意識を繋げていきます。上体は、緊張させず、リラックス状態を意識します。
- (1)の状態から、左足を大きく一歩後方へ進め、マットに対し、45度左側に足先を開きます。左足うら全体で、床を押します。この時、親指からうちももを特に意識をおき、うちももを内側に少しひねるようにし、左の骨盤を前に押し出します。
- (2)の状態から息を吐きながら、左の骨盤を今度は真横に開いていきます。左足先は、マットに対し90度に開き、両手も開きます。
- 骨盤を左側にずらし、右手を前方にひっぱられるように移動させます。左の骨盤と右手先の感覚が繋がるように意識します。反対側も同様に行います。
- 右手を右足に落とし、左手を天井に上げ、左胸から天井へひっぱられるようにカラダを広げます。
(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)
★この物語の登場人物
新城紗季(しんじょうさき/30歳)プロダクトブランド販売会社のマーケティング部につとめる。この物語の主人公。
アレクサンドル・ハミルトン(アレックス)(38歳)フランス系アメリカ人。ヨガスタジオを経営。
相場優斗(あいばゆうと/38歳)外資系投資銀行の行員。
桜井真治(さくらいしんじ/35歳)紗季と同じ会社でニューヨーク店勤務。紗季の元恋人。
東谷しおり(ひがしやしおり/25歳)ヨガ仲間のひとりで、紗季の会社の事務系OL。