(この物語は…毎朝のヨガ習慣をはじめてから108日目を迎えた、ヨガが好きなOL 紗季に、久々に起こる、恋と仕事の変化。朝のヨガスタジオで巻き起こる男女のハートフルなラブストーリー。小説のストーリーに合わせ、毎週おすすめヨガポーズをご紹介します。
Week 3は、紗季の元恋人である桜井真治の視点でストーリーが展開します!)
Vol.19 Week 3 「ニューヨークの真実」 (5)誰かを想う本当の気持ち
「部長がお呼びです」
しおりが会議室のドアをノックしながら、急いだ口調で呼び立てた。
しおりはいつもタイミングがいい。ちょうど良く不器用で、ちょうど良くかわいくて。
部長からの話では、年始すぐに戻ってほしいとのこと。年始に大量の受注が入ることが決まり、納品先のクライアントへの挨拶をしてほしいとのことだ。
しおりはすでにその話を聞いていて、フライトの変更をしてくれていた。
「「お疲れさまでした!」」
奥の方でカンパイをする声が聴こえてくる。今日は納会で、ビールが入ったマグを手渡される。
僕たちが取り扱うチタンを使ったマグは、世界的にいま注目を浴びている。サミットの記念品に取り上げられたり、ロイヤルファミリーにも送られたりするなど、日本の製造業が誇る唯一無二の技術を、世界が愛する。
そのマグで飲むビールは格別だ。いつ見ても、ほれぼれする。
紗季のそういう存在になりたい。
その日を過ごす相手なんてすぐに見つかった。多少なりとも、入れ込むひともいた。上手くやっていたし、楽しかった。誰かを失っても、それはto be continuedで、メニューに戻るだけで、続編を楽しめた。
ビールを一気に飲み干すと、マグを片付けようと給湯室へ向かう。そこで、僕は足を止めざるを得なくなった。
肩をふるわせている紗季がいた。
抱きしめたい衝動を押さえながら、片手を伸ばそうとしたその時、紗季が両手を大きく天井にあげた。そうしてゆっくり手を下ろすと、大きく息を吐き出し「よし」とつぶやいた。
とっさに僕は、壁と一体化して隠れた。
そして、オフィスへ戻る背中を見送る。
ひとり強くなった紗季に、僕は何ができるのだろうか。
この時初めて、役割のない恋の切なさを知った。
35年間で初めて変わりのない恋に、出会ってしまった。
(つづく)
今週のおすすめヨガ「三角のポーズ」
Week 3のおすすめ「三角のポーズ」も、先週の「木のポーズ」同様、ヨガの代表的なポーズ。
腕から体側、脚までをバランスよく伸ばし、大地を踏みしめる力強いポーズ。滞りがちな股関節周辺の関節の動きや筋肉を動かし、リンパの流れや血流も良くします。
股関節の位置が上手くはまると、きつさがなくなり、関節への心地よい刺激で、身体の中がぽかぽかしてきます。
「三角のポーズ」の流れ
- 足裏全体を床に根をはるようにイメージし、ひざ頭、うちももを引き上げ、骨盤まで足の裏からの意識を繋げていきます。上体は、緊張させず、リラックス状態を意識します。
- (1)の状態から、左足を大きく一歩後方へ進め、マットに対し、45度左側に足先を開きます。左足うら全体で、床を押します。この時、親指からうちももを特に意識をおき、うちももを内側に少しひねるようにし、左の骨盤を前に押し出します。
- (2)の状態から息を吐きながら、左の骨盤を今度は真横に開いていきます。左足先は、マットに対し90度に開き、両手も開きます。
- 骨盤を左側にずらし、右手を前方にひっぱられるように移動させます。左の骨盤と右手先の感覚が繋がるように意識します。反対側も同様に行います。
- 右手を右足に落とし、左手を天井に上げ、左胸から天井へひっぱられるようにカラダを広げます。
(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)
★この物語の登場人物
新城紗季(しんじょうさき/30歳)プロダクトブランド販売会社のマーケティング部につとめる。この物語の主人公。
アレクサンドル・ハミルトン(アレックス)(38歳)フランス系アメリカ人。ヨガスタジオを経営。
相場優斗(あいばゆうと/38歳)外資系投資銀行の行員。
桜井真治(さくらいしんじ/35歳)紗季と同じ会社でニューヨーク店勤務。紗季の元恋人。
東谷しおり(ひがしやしおり/25歳)ヨガ仲間のひとりで、紗季の会社の事務系OL。