今日のカフェボンボンの本棚は、『こうちゃん』。
『ミラノ霧の風景』『ヴェネツィアの宿』などで知られる須賀敦子と酒井駒子の絵が織りなす、幻想的な心の風景。「あなたはこうちゃんにあったことがありますか。」こんな問いかけで物語は始まります。
『こうちゃん』
文:須賀敦子/画:酒井駒子
出版社:河出書房新社
朝焼けに染まる遠くの山を見ていたら、「こうちゃん」の笑い声が聞こえた気がしました。雪の降り出しそうな朝や鐘の音が遠くに聞こえる夕暮れに、わたしはこうちゃんの気配を感じます。
心細くて頼りない気持ちの時、何かそら恐ろしい時、小さなこうちゃんがどこからともなく現れて、そっと寄り添ってくれるのかもしれません。
こうちゃんはかけまわったり笑ったりするけれど、またすぐどこかに行ってしまう。こうちゃん自身、知らない場所へ。
きっと誰の心にもいるこうちゃん。もうこの世のひとではないような、透きとおった声の男の子。須賀敦子のつむぐ言葉が、心の深いところに語りかけてくる。
こうちゃんの「朝時間」は、南の国に雪が降った朝。
小さな子どもはただじっと、雪にみとれています。
夢とうつつのあわいで、いくつもの美しい「朝」と出会える珠玉の作品です。
Love, まっこリ〜ナ
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