今日のカフェボンボンは、『自選 谷川俊太郎詩集』。
デビュー以来、二千数百に及ぶ詩の中から自らが厳選した詩一七三篇。心揺さぶられる詩を、夏真っ盛りの八月の朝に。
『自選 谷川俊太郎詩集』
著者:谷川俊太郎
出版社:岩波書店
ネロ
もうじき又夏がやってくる
お前の舌
お前の眼
お前の昼寝姿が
今はっきりと僕の前によみがえる
これは谷川俊太郎が18歳のときの詩。愛された小さな犬にあてた「ネロ」の冒頭の一節です。たった二回しか夏を知らなかった子犬のネロ。「僕」の前には無限の夏が広がっているけれど、新しい夏がやってくるたび、ネロのいた夏を思い出す……。
夏になると谷川さんの詩を無性に読みたくなるのは、この詩のせいかもしれません。ただ蝉の声を聞きながら、地球の柔らかい丸みや空の青さを思っていたい。
この詩集の「朝時間」は、「ぱん」の一節より。
ふんわり ふくらんでいます
そとはちゃいろ なかはしろ
いいにおいです
わたしは ぱんです
変わりばえのしない日常が輝く。たとえば、朝食のパンのふくらみに。そんなささいなことに気づいたとき、人はほほえむのですね。
Love, まっこリ〜ナ