雪乃がこんな風に泣いている姿を初めてみた。
いつの間にか、私も泣いていた。もう、親友の恋愛話なんかで泣くことはないと思っていたのに。
雪乃は私にも内緒で、5年も不倫を続けていたらしい。だが最近やっとの思いで抜け出せたと。
雪乃は1人でも大丈夫だと本気で思っていた私は、まんまと雪乃の演技に騙された。それ以上に、私の雪乃への憧れが、私の思考をそうプログラミングしたのだ。
雪乃は、好きになった人の前では、ただの女だった。あんなに、格好良くって、器用で、人生楽しんでいるように見えた雪乃が、ただただ、しおらしく泣いていた。
頭がいい雪乃は、自分が置かれた立場をあまりにも良く理解していたし、ただただ、どうにもならない思いにもがき悲しんでいる。
「男なんて星の数ほどいるよ」
なんて安易な言葉をかけられるはずもなく、私は、親友にも何もしてあげられることがないことに愕然とした。
そして同時に、恋愛経験が薄いのは私の方だったんだ、と気付くという顛末!
そんなことに、情けなさを感じるって何?
何のプレッシャーなの?
(この小説は、毎日更新です。続きはまた明日!)
物語の登場人物
立川萌乃(もえの) 28歳
静岡出身。銀行の一般職。趣味で、フラワーアレンジメントをならう。早起きできる朝美人に憧れている。
新城雪乃(ゆきの) 28歳
萌乃と同じ高校時代からの友人。なんでも出来る格好いい人物として萌乃からは頼りにされている。
藤井倫太郎(りんたろう)28歳
萌乃、雪乃と同じ高校のサッカー部出身で東京の大学へ進み、留学。外資系投資銀行につとめるいわゆるエリート。
木村ことみ 28歳
萌乃の同期で、同じ支店にずっと勤めている。常識人であり現実主義者。
柳原誠士(せいじ)28歳
萌乃とことみの同期入社である、総合職の銀行マン。
近藤裕太(ゆうた)24歳
萌乃がフラワーアレンジメントの教室の隣にあるパーソナルトレーニングスタジオのトレーナー。