今日のカフェボンボンは、『やわらかなレタス』。
江國香織の食をめぐるエッセイ集。美味しい食べものの数々が、旅の記憶や子どもの頃の思い出を呼び覚まします。
『やわらかなレタス』
著者:江國香織
出版社:文藝春秋
目次はとても意味深長。薔薇と蒲焼、ポタージュと機械、病院と豚足、パンと不文律……。ありふれた日常の食べものも秘密めいてみえてきます。
ある寒い日に犬の散歩から帰宅すると“あたたかいジュース”が飲みたくなる。この飲みものを一度も飲んだことはないのに、寒さに震えながら確信をもって、あたたかいジュースだわ、と思うのです。
あたたかいジュースとは、トーベ・ヤンソンの『ムーミン谷の冬』に登場する架空の飲みもの。それはいったいどんな色? どんな味? 赤いのかしら。想像するだけで体の芯から温まりそう。そんな夢見心地が伝わって、読者を至福の気分にしてくれます。
著者は、毎年、お正月が「少し嬉しい」。仕事の電話も鳴らないし、食材も豊富だし、空気が澄んで夜空も美しい。でも、お正月が終わると、普段が帰ってきたと全身で安堵する。この気持ち、ちょっとわかります。
江國香織の「朝時間」は、朝からシャンパンを飲むお正月。
本のお供には、著者が吹雪のニューヨークで立ち寄ったレストランにちなんで、フライドチキンとワッフルをいかがですか。心とからだにしみわたる果物やスープ、そしてお酒が、生きる力をくれるのだと実感する一冊です。
以前ご紹介した『日のあたる白い壁』もおすすめです!
Love, まっこリ〜ナ