今日のカフェボンボンは、プリズムのように輝く恋の物語を。
山田詠美の『タイニーストーリーズ』が待望の文庫化。21ものストーリーがぎっしりつまったぜいたくな短編集です。
『タイニーストーリーズ』
著者:山田詠美
出版社:文藝春秋
著者のあとがきには「一貫したテーマも文体も何もなし。無責任な寄せ集め」とある。けれど「ひとたび読者の心の濡れた部分に落とされれば、たちまち色が滲んであたりを染め上げてしまう」。そんな強烈なタイニーストーリーズ。
さまざまな形の愛や憎しみが、読者の心にしみ込んでいく。心の濡れ具合によって滲み方は違うけれど。
夫の入院するアルコール病棟に通う妻、王女様と小間使いのような従姉妹、息子にババアと呼ばれる母親、25年の時を経て積年の恨みをはらそうとする女。
息苦しくなるような世界を大胆に鮮やかに切り取ってみせる。切れ味鋭いナイフでスッと、あるいは、大きなスプーンで甘いデザートをひとすくい。ショートストーリーだけに展開は予想外、幕切れは少なからずショッキングなのだ。
シリーズのような「GIと遊んだ話」は、エイミーカラーあふれるストーリー。短編の合間にリズミカルにはさまれた5つの物語が、じんわりとやわらかい光を放っている。
Love, まっこリ〜ナ