BLOG

プリズムのように輝く恋の物語『タイニーストーリーズ』

 

今日のカフェボンボンは、プリズムのように輝く恋の物語を。

山田詠美の『タイニーストーリーズ』が待望の文庫化。21ものストーリーがぎっしりつまったぜいたくな短編集です。

20130416

タイニーストーリーズ
著者:山田詠美
出版社:文藝春秋

著者のあとがきには「一貫したテーマも文体も何もなし。無責任な寄せ集め」とある。けれど「ひとたび読者の心の濡れた部分に落とされれば、たちまち色が滲んであたりを染め上げてしまう」。そんな強烈なタイニーストーリーズ。

さまざまな形の愛や憎しみが、読者の心にしみ込んでいく。心の濡れ具合によって滲み方は違うけれど。

夫の入院するアルコール病棟に通う妻、王女様と小間使いのような従姉妹、息子にババアと呼ばれる母親、25年の時を経て積年の恨みをはらそうとする女。

息苦しくなるような世界を大胆に鮮やかに切り取ってみせる。切れ味鋭いナイフでスッと、あるいは、大きなスプーンで甘いデザートをひとすくい。ショートストーリーだけに展開は予想外、幕切れは少なからずショッキングなのだ。

シリーズのような「GIと遊んだ話」は、エイミーカラーあふれるストーリー。短編の合間にリズミカルにはさまれた5つの物語が、じんわりとやわらかい光を放っている。

Love, まっこリ〜ナ

 

この記事を書いた人
Nice to meet you!

朝読書のすすめ『まっこリ~ナのCafe BonBon』

公式ブログ
小説から絵本まで、編集者が選ぶ”朝読書”におすすめの1冊
Written by

まっこリ〜ナ

編集者・ライター

出版社勤務を経てフリーランスに。図鑑や写真集、子どもの本や雑誌などの編集に携わる。本がくれる愛のチカラを糧に生きる日々。いちばん好きな本の主人公は長くつ下のピッピ。
趣味は草花園芸、編み物、ランニング、スポーツ観戦。

連載記事一覧

今日の朝の人気ランキング