今日のカフェボンボンは、『よろづ春夏冬中』。
春夏冬中と書いて「あきないちゅう」と読む。夢かうつつか、変幻自在な短篇集をどうぞ。
『よろづ春夏冬中』
著者:長野まゆみ
出版社:文藝春秋
著者のあとがきの一文には、ささやかな「おかしみ」を感じていただければけっこう、とある。そのおかしみがじんわり効いてニヤリとする話もあれば、やるせなさに変わる作品もある。
男性同士の恋愛を繊細に密やかに描く。通学の電車、予備校、高校のロッカーで、日常がぐらりと変化して、気づいたら異界に足を踏み入れている。
世界の変わりようが鮮やかで変幻自在。妖しい場所に迷い込んだときの恍惚感、夢から覚めたあとの気恥ずかしさも「おかしみ」に通じるのかもしれない。
時給の高い「代筆人求ム。毛筆できる方」の広告にひかれ、面接に出かけた大学生が不思議な体験をする「雨過天青」、男子高校生同士の微妙な関係を描いた「空耳」。どちらも書道が物語の鍵なのは偶然でしょうか。
「タビノソラ」「雨師」「獅子座生まれ」など14の短篇を収録しています。
以前ご紹介したこちらの作品もおすすめです。
*『野川』…伝書鳩を育てる少年たちを叙情豊かに描いた感動作。文庫も発売になりました。
*『お菓子手帖』…自伝風極上スイーツ小説。甘くて懐かしいお菓子の記憶をつづる。
Love, まっこリ〜ナ