今日のカフェボンボンは、芥川賞作家・堀江敏幸の『河岸忘日抄』。
河岸の「どこにも移動しない船」を舞台にした、端正で味わい深い小説。ゆったりと過ごす休日の朝、心静かに読みたい本です。
『河岸忘日抄』
著者:堀江敏幸
出版社:新潮社
「彼」が暮らすのは、異国の河岸に繋留された船の中。たくさんの本やレコードに囲まれた快適なリビングで、時間の流れゆくまま日々を送っている。
繋留船の生活は彼にとって刺激的な空間。本や音楽、船から見上げる星、対岸から響いてくる打楽器の音に五感が呼び覚まされ、思考は現在と過去を行き来しながらがどこまでも広がっていく。言葉をたどっていくうちに、彼の想い、心のよりどころやためらいがみえてくる。
私が惹きつけられるのは、彼と客人とのおしゃべりの場面。郵便配達夫や船上生活者の女の子に、船内のキッチンでクレープやお菓子を作ってもてなすと、デッキにはコーヒーとクレープの香りが漂い、静かに閉じた船の世界がふわっと色づく。
船上の生活がいつまで続くかは彼にもわからない。彼自身もミステリアスで、過去も今いる場所もはっきりとは書かれていない。河の流れのような不安定さ、不確かさもまたこの小説の魅力です。
異国の船の「朝時間」は、向こう岸から聞こえてくるジャンベの音。
本のお供には、焼きたてののクレープをいかがですか。物語のシーンのように、たっぷり塗ったヌテラに輪切りのバナナをを散らしてどうぞ。
素敵な日曜日を。
Love, まっこリ〜ナ