今日のカフェボンボンは、女の本音が炸裂するスリリングな小説。
マンモス団地を舞台にした『爪を噛む女』と『団地の女学生』の二編。
住人たちのやるせない日常をシニカルに描きます。
『団地の女学生』
著者:伏見憲明
出版社:集英社
『爪を噛む女』の主人公・美弥は38歳独身。団地の独り暮らしの高齢者を世話する訪問ヘルパーをしている。美弥自身が育った団地の自宅と仕事先を自転車で行き来するだけの生活。時が止まったような古い団地独特の空気のせいか、倦んだ気配が美弥にまとわりついているのだ。
そんなある日、歌手として成功した同級生の都と再会、美弥の心は大きく波立つ。嫉妬心は誰にでもあるけど、たいていはなんとかコントロールして折り合いをつけていかなきゃならない。だけど、嫉妬の相手が大成功して美しく変貌をとげた幼なじみだったら話は別。美也の心はねたましさと羨望でふくれあがる……。
美弥の本音が苦々しい毒に満ちていればいるほどスリリング。自分のどす黒い感情を美弥はごまかさない。それが読後感の良さにつながっている。派遣先の家庭の事情にやきもきするところは『家政婦は見た!』の市原悦子さんみたい。
同じ団地を舞台にした短編『団地の女学生』は、84歳の瑛子と、隣にすむ40歳独身男でゲイのミノちゃんの物語。桜草団地の住人たちは、危なっかしいのに芯が強い。
息苦しくてやるせない日常。
このリアルな世界をもっと見たい。
Love, まっこリ〜ナ