今日のカフェボンボンは、宮下奈都の『よろこびの歌』。
少女たちへの温かいまなざしが深く印象に残る青春小説。若々しい喜びにあふれた歌声が聞こえてきます。
『よろこびの歌』
著者:宮下奈都
出版社:実業之日本社
私立の新設女子校に通う女子高生たち。
有名なヴァイオリニストの娘で声楽の道を目指す御木元玲は、音大付属受験に失敗し、この女子校に進学します。将来が見えず、クラスメートや大好きだった音楽からも自分を遠ざけていた玲に、ある日、校内合唱コンクールの指揮者の役がまわってくるのですが……。
くったくのない子もいるけれど、玲や彼女をとりまく少女たちは、この学校に通うそれぞれの事情があって、心を閉ざしたり前に進めずにいるんですね。
ピアノが好きで玲に憧れる千夏、なぜか玲に反発してしまう早希、特殊な霊感があることを重荷に感じている史香。そんな彼女たちが、玲が指揮する合唱をきっかけに、少しずつ変わっていきます。
少女たちひとりひとりを見つめる物語は、ためらいがちな、けれど豊かな玲のソロに千夏や早希や史香たちのパートが徐々に重なって、いつのまにか、力強い調べを奏でるようになるのです。
合唱が生み出す歓喜が、みんなの心をゆっくりと溶かし、ひとつにする。ところどころに挿入されるザ・ハイロウズの歌にも、心が揺さぶられます。
女子高生たちの「朝時間」は、冬のマラソン大会。足は重く息が白くなる寒い朝です。本のお供には、ちょっとビターなチョコレート・ブラウニーをいかがですか。
生きる喜びととまどい、青春のほろ苦さをひりひりと感じる本をどうぞ。
Love, まっこリ〜ナ