おはようございます。ファイナンシャルプランナーの稲村優貴子です。
この連載は、『朝のスキマ時間に学ぶ♪家計管理・お金の基本』というテーマでお届けします。
近年、観光地で「地元住民」と「それ以外」で料金を分ける「二重価格」が広がっていますね。
日本でも海外でも導入例が増えており、その背景にはオーバーツーリズムや施設維持費の増加、住民生活への影響といった課題があります。
今回は、実際にどのような二重価格が行われているのか、具体例とともにメリット・デメリットを解説します。
「日本」の二重価格の事例
姫路城
市民:1,000円(据え置き)
市民以外:2,500円

さっぽろテレビ塔
市民:800円
市民以外:1,200円
京都市バス・地下鉄
マイナンバー連携により、市民と非市民の料金差を2027年度中に設ける計画があります。
市民200円、市民以外350〜400円程度の案が検討されています。
ジャングリア沖縄
国内居住者:6,930円
外国人:8,800円
【海外】の二重価格の事例

タージ・マハル(インド)
インド人:50ルピー
外国人:1,100ルピー
アンコール・ワット(カンボジア)
カンボジア人:無料
外国人:37ドル
ギザのピラミッド(エジプト)
エジプト人:60EGP(エジプトポンド)
外国人:700EGP
その他
メトロポリタン美術館(アメリカ)やルーヴル美術館(フランス)などでも、居住地や国籍による料金差が設けられているケースがあります。
海外のほうが、日本より大きな価格差を設定している傾向が見られます。
二重価格のメリット
【1】観光地の維持管理費を確保できる
歴史的建造物や自然公園の維持には、多くの費用がかかります。
姫路城では、市民以外の料金を引き上げることで、年間約10億円の増収を見込んでいます。
海外でも、タージ・マハルやルーヴル美術館が外国人料金を高く設定し、修復費や警備費などに充てています。
【2】地元住民の生活を守れる
観光地では、物価上昇や混雑によって、地元住民が自分の街を楽しめなくなるケースがあります。
北海道の一部スキー場では、リフト券の高騰により道民が利用しづらくなる問題が起きていました。
そこで住民割を導入し、最大7割引で利用できるようにしている施設もあります。
【3】混雑緩和につながる
価格を上げることで、ピーク時の観光客数を抑制できる場合があります。
京都市バスが検討している「市民優先価格」も、観光客の過度な利用を抑え、市民の移動を確保する狙いがあります。
結果として、観光客の満足度低下を防ぐ効果も期待されています。
【4】地域への還元が明確になる
観光客から得た追加収益を、トイレ整備や案内板の多言語化、清掃費などに充てることで、地域全体の利便性向上につながります。
住民にとっても、「観光客が増えても負担ばかりではない」という納得感が生まれやすくなります。
二重価格のデメリット
【1】「差別では?」という批判が起きやすい
特に国籍で料金を分ける場合、「差別」と受け取られるリスクがあります。
日本では、外国人だけ料金を高くすることに抵抗感を持つ人も多いため、最近は「国籍」ではなく「居住地」で区分する方式が増えています。
【2】認証の手間が増える
住民割を適用するには、免許証やマイナンバーカードなどの確認が必要になります。
京都市ではICカードとマイナンバーを連携させる仕組みが検討されていますが、導入コストや現場対応の複雑化も課題です。
【3】観光客離れのリスクがある
料金差が大きすぎると、「不公平」と感じて訪問を避ける観光客が出る可能性があります。
特にSNSで拡散されると、イメージ悪化につながりやすい点にも注意が必要です。
海外では10倍以上の価格差が一般的な地域もありますが、日本ではまだ文化的に浸透しておらず、丁寧な説明が求められています。
【4】価格差の根拠が不透明だと不信感につながる
「なぜこの金額差なのか」「増収分はどこに使われるのか」が不透明だと、住民・観光客双方の不満につながります。
使い道を明確にし、定期的に公表することが、信頼構築の鍵になります。
まとめ
二重価格は、観光地の維持と住民生活の保護を両立させる有効な手段のひとつです。
ただし、導入には丁寧な説明と透明性が欠かせません。
国籍ではなく居住地で区分する、増収分の使い道を明確にする、認証をスムーズにするなどの工夫があれば、観光客にも住民にも納得されやすい制度になりそうです。
観光地が持続可能であるために、二重価格は今後ますます重要な選択肢となっていくのかもしれません。


