「朝起きられない」「朝起きるのがつらい」とお悩みの方は多いのではないでしょうか。朝にすっきり起きられないと、気持ちよく1日のスタートが切れませんよね。
そこで今回は、朝起きられない原因と対処法について詳しくご紹介します。また、朝起きられなくなる病気についても解説します。
【目次】
– 朝起きれない原因3つ
【1】睡眠不足・概日リズムの乱れ
【2】睡眠障害の可能性
【3】その他、精神疾患の可能性
– 【世代別】朝起きられない原因・朝起きられなくなる病気
【1】思春期の子供によくみられる起立性調節障害
【2】大人なのに朝起きられない、大人の睡眠障害3つ
【3】若いうちから気を付けたい、高齢者に多い睡眠障害3つ
– 朝すっきり目覚めるための対策4つ
朝起きられない原因3つ
前の日に寝るのが遅くなったり、前日の疲れが残っていたりして朝起きられないことは、誰もが1度は経験したことがあるのではないのでしょうか。「原因がはっきりと分かっている」「いつもは起きられるけど、たまに朝起きられない」などであれば、問題はありません。
しかし、原因の分からない状態で朝起きられない日が続くと、日常生活に支障が出てしまいますよね。
朝起きられない原因は、主に以下の3つが考えられます。
- 【1】睡眠不足や概日リズムの乱れ
- 【2】睡眠障害
- 【3】その他精神疾患
それぞれについて詳しく解説します。
【1】睡眠不足・概日リズムの乱れ
朝起きられない原因の1つめは、単純に睡眠時間が短いことです。
人の体は睡眠によって体と脳を休めています。睡眠時間が短かったり、睡眠の質が悪かったりすると、脳と体が正常に働かなくなり日常生活に支障をきたします。
睡眠不足が慢性的に続くと、糖尿病や心筋梗塞・狭心症などの生活習慣病にかかりやすくなり、健康にも悪影響を及ぼします。
ほかに「概日リズム」の乱れも朝起きられない原因です。概日リズムとは約24時間の周期で繰り返される体内時計のリズムのことをいいます。概日リズムが一定であるおかげで、人は約24時間周期で夜になると眠くなり、朝になると自然に目が覚めます。
概日リズムが崩れると、夜になっても眠くならない、朝起きられないなどの睡眠サイクルの乱れだけでなく、眠気や頭痛・倦怠感・食欲不振などの体調不良を引き起こしかねません。
(参考:e-ヘルスネット「睡眠と生活習慣病との深い関係」「睡眠・覚醒リズム障害」)
【2】睡眠障害の可能性
朝起きられない原因の2つめは睡眠障害です。
睡眠障害は大きく以下の3つに分けられます。
- 不眠症
- 過眠症
- 睡眠時随伴症
不眠症とは、入眠障害や中途覚醒・早朝覚醒などの睡眠問題が続き、日中に倦怠感や意欲・集中力・食欲低下などの不調が現れる病気です。
過眠症は、日中の仕事や学業などの際、日常生活に支障をきたすほどの過剰な眠気がおきる病気をいいます。
睡眠時随伴症は、睡眠中に突然叫び声をあげたり、寝床から出て歩き出したりする病気です。多くは幼少期にはじまり、思春期早期に自然に治ります。
睡眠障害は一時的であればセルフケアで改善できますが、慢性的に続くようであれば、一人で改善することは難しい場合があります。一度かかりつけ医や睡眠専門医に相談しましょう。
睡眠障害の詳細は、この後に記載のある「【世代別】朝起きられない原因・朝起きられなくなる病気」の章にて解説します。
(参考:e-ヘルスネット「睡眠障害」)
【3】その他、精神疾患の可能性
朝起きられない原因の3つ目は、精神疾患による不眠症です。
ストレスや緊張、うつ病なども不眠と深く関係があります。神経質で生真面目な性格の方はストレスを感じ、不眠症になりやすい傾向があります。
「ただの不眠だと思っていたらうつ病だった」という話も。
(参考:e-ヘルスネット「不眠症」)
【世代別】朝起きられない原因・朝起きられなくなる病気
朝起きられなくなることには、何かしらの病気が関連している可能性もあります。ここからは、朝起きられなくなる病気を世代別にご紹介します。
以下に思い当たる点がある場合は、一度病院で受診することを検討しましょう。
【1】思春期の子供によくみられる起立性調節障害
起立性調節障害は、自律神経機能の不調が原因で朝起きられなくなる病気です。10〜16歳の思春期の子どもに多く見られます。朝起きられない他に、動悸や頭痛・倦怠感・立ちくらみ・失神などの症状があります。
遺伝的な要因が大きい病気ですが、水分不足や社会的ストレス、活動量低下による身体調節機能の異常などが原因と言われています。
重症になると、不登校やひきこもりを引き起こし、学校生活やその後の社会生活に支障をきたすおそれがあります。そのため、初期症状のうちに適切な治療を受けることが大切です。
(参考:日本大学医学部附属板橋病院「起立性調節障害」)
【2】大人なのに朝起きられない、大人の睡眠障害3つ
「大人なのに朝起きられないのは情けない」と自分を責めてはいませんか?実は、大人なのに朝起きられない原因は睡眠障害である可能性もあります。
ここからは、大人に多い睡眠障害を3つご紹介します。
1. 過眠|日中に病的な眠気に襲われる睡眠障害
昼間に強い眠気に襲われ、目覚めていられない場合は「過眠」という睡眠障害の可能性があります。
過眠とは、夜間に充分な睡眠をとっているにも関わらず、昼間に強い眠気に襲われる状態のことです。誰しも昼間に眠気を感じることはありますが、過眠は自分の意志で制御できないような眠気が連日、数か月続くようなこともあります。
過眠を引き起こす病気は様々ですが、多くは「睡眠時無呼吸症候群」と「ナルコレプシー」が原因です。
睡眠時無呼吸症候群とは、入眠すると呼吸が止まってしまう病気のことで、無呼吸によって睡眠が中断されて過眠を引き起こします。また、ナルコレプシーとは目覚ましに必要なピポクレチンや、オレキシンというタンパク質を作り出すことができなくなる病気です。
過眠は業務に支障をきたすだけではなく、運転中に発症すると事故の原因にもなりかねないため、早めに睡眠障害を専門とする医療機関に受診してください。
(参考:e-ヘルスネット「昼間の眠気 -睡眠時無呼吸症候群・ナルコレプシーなどの過眠症は治療が必要」)
2. 交代勤務睡眠障害|シフト制勤務で起こりやすい睡眠障害
シフト制勤務で睡眠時間がバラバラな生活を送っている方は、交代勤務睡眠障害を患う可能性があります。
交代勤務睡眠障害とは、睡眠の時間帯が頻繫に変化する生活を送ることにより、睡眠障害をはじめ、精神や身体に悪影響を及ぼしている状態のことです。
例えば、夜間勤務を終えて朝方から睡眠を取ろうとしても寝付けず、寝てもすぐに目を覚ます症状が典型的です。十分な睡眠が取れないと、次の仕事に影響を及ぼしかねません。
交代勤務睡眠障害は、生体リズムのズレが原因と考えられるため、生体リズム間のズレの改善を中心とした治療が必要です。
(参考:e-ヘルスネット「交代勤務睡眠障害 」)
3. 睡眠相後退(前進)症候群|重要な予定があっても起きられない睡眠障害
夕方に強い眠気に襲われたり、朝早くに目が覚めてしまうことを頻繁に繰り返す場合は睡眠相後退(前進)症候群が考えられます。
睡眠相後退(前進)症候群とは、入眠困難と覚醒困難が慢性的に持続することで、社会的に望ましい時間に入眠または覚醒できない状態のことです。
多くのケースで、なかなか寝付けず午前3時〜6時に入眠するため、朝になっても起きられなかったり昼間に強い眠気に襲われます。
夜遊びなどで同様の睡眠・覚醒パターンになる場合はありますが、試験など非常に重要な予定があったとしても起きることができない点が睡眠相後退(前進)症候群の特徴です。
睡眠相後退(前進)症候群になると、楽しみにしていた予定にも行けないなど、仕事だけではなくプライベートにも悪影響を及ぼします。入眠前の高照度光療法やメラトニン投与など、適切な治療を受けることで改善が期待できます。
(参考:e-ヘルスネット「睡眠相後退(前進)症候群 」)
【3】若いうちから気を付けたい、高齢者に多い睡眠障害3つ
年齢が上がるにつれて睡眠の質は下がり、健康な高齢者でも睡眠が浅い、途中覚醒や早朝覚醒などの悩みが増加します。
60歳以上の約3人に1人が睡眠問題を抱えていると言われています。高齢者の早朝覚醒は、加齢により生体リズムが前倒しになることが原因です。したがって、高齢者の早朝覚醒の多くは病気ではなく、自然なものです。
しかし、中には睡眠が病気によって妨げられていることがあります。ここでは、高齢者に多い睡眠障害についてご紹介します。高齢者だけでなく、若い方でもかかる可能性があるため、当てはまる症状がないかを確認しましょう。
(参考:e-ヘルスネット「高齢者の睡眠」)
1. 睡眠時無呼吸症候群|呼吸が止まる睡眠障害
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に何度も呼吸が止まってしまう病気です。深い眠りが取れなくなり、日中に強い眠気を引き起こすため、何らかの事故につながる恐れがあります。
また、呼吸が止まると血液中の酸素濃度が低下するため心臓の働きが強まり、高血圧を引き起こしたり動脈硬化や心筋梗塞・脳梗塞などの病気を引き起こす確率も上昇します。
中等症・重症の状態を放置していると、10年後に3〜4割の方が死亡するといわれているため、早期に治療を行うことが大切です。
睡眠時無呼吸症候群は寝ている間に症状が出るため、自分では気づきにくい病気です。日中に強い眠気がある方やいびきをよくかく方は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
すみやかに専門の医療機関の受診をおすすめします。
(参考:e-ヘルスネット「睡眠時無呼吸症候群 / SAS」、東京医科大学病院「睡眠時無呼吸症候群」)
2. 周期性四肢運動障害|睡眠時の運動で疲労が重なる睡眠障害
周期性四肢運動障害は、睡眠中に四肢(主に下肢)が異常に動いて睡眠が浅くなる病気です。周期的に四肢がピクピク動く「不随意運動」が生じるため、脳が覚醒状態になり、不眠や日中の強い眠気を引き起こします。
年齢とともに発症率が増加し「レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)」と併発することが多い病気です。
レストレスレッグス症候群とは、夜になると下肢がムズムズした不快感により、不眠・仮眠を引き起こす病気です。周期性四肢運動障害は自覚症状のない場合が多く、レストレスレッグス症候群が見つかって初めて周期性四肢運動障害と診断されるケースも少なくありません。
(参考:e-ヘルスネット「周期性四肢運動障害」「レストレスレッグス症候群 / むずむず脚症候群」、国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部「睡眠関連運動障害」)
3. レム睡眠行動障害|夢で見たことが行動に反映されてしまう睡眠障害
レム睡眠行動障害は、夢の中の行動が現実の行動となって現れる病気です。睡眠中に突然奇声を発する・殴る・蹴るなどの行動をとってしまうため、眠りが浅くなったり疲れが取れにくくなったりし、生活に支障をきたします。
レム睡眠中は筋肉の緊張を緩める神経調整システムがはたらくため、夢で行動しても現実では体が動きません。レム睡眠行動障害はこの筋肉の緊張を緩める神経調整システムの阻害が原因で発生します。
レム睡眠行動障害の発症率は加齢とともに増加し、50歳以降の男性に多くみられます。
(参考:e-ヘルスネット「レム睡眠行動障害」、国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部「睡眠時随伴症」)
朝すっきり目覚めるための対策4つ
睡眠障害など病気にかかっているわけではないのに、朝起きられない場合は、一度生活習慣を見直してみましょう。年齢に関わらず、朝すっきり起きるために有効な生活習慣を4つご紹介します。
【1】規則正しい生活を送る
まずは、規則正しい生活を送ることを心がけましょう。
規則正しい生活が重要な理由は、規則正しい生活を送ることで体内時計が形成され、ホルモンの分泌や生理的な活動を調節して快適に入眠できるように準備してくれるからです。
日本人の平均睡眠時間は約7時間と言われていますが、適切な睡眠時間には個人差があります。自分が一番活発に動ける睡眠時間を把握し、入眠時間と覚醒時間を一定にすることを意識してください。
(参考:e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」、参考:e-ヘルスネット「不眠症」)
【2】光浴で体内時計を整える
前述した「概日リズム」を整えるには、「メラトニン」と呼ばれるホルモンが鍵を握っています。
メラトニンは脳の松果体から分泌されるホルモンです。睡眠・覚醒リズムやホルモン分泌リズムなどの概日リズムを調整する作用があります。
メラトニンは明るい光によって分泌が抑制されるため、日中はメラトニンの分泌が少なく、日が暮れると分泌量が多くなり眠気を引き起こします。
ただし、夜に明るい光を浴びてしまうとメラトニンが分泌されず、寝る前になっても眠くならないため注意が必要。概日リズムを整えるために、朝は太陽の光を浴びて、夜は明るい光を浴びないようにしましょう。
(参考:e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」、参考:e-ヘルスネット「メラトニン」)
【3】軽い有酸素運動をする
軽い有酸素運動を日常的に行うことも大切です。国内外の調査により、運動習慣がある人は不眠が少ないという結果が出ています。
ただし、単発的に運動をしても不眠に効果はなく、習慣的に行うことが重要とされています。また、激しい運動は逆効果になりかねないため、ジョギングなどの軽い有酸素運動をすることで、無理せず運動習慣が身に付きます。
また、運動のタイミングも睡眠に関係しており、効果的な時間帯は夕方から夜(就寝の3時間前)です。睡眠直前の運動は脳を活発化させるため、遅くても就寝の3時間前に軽い有酸素運動をしましょう。
(参考:e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」、参考:e-ヘルスネット「不眠症」)
【4】睡眠に向けた入浴
入浴は加温効果があり、睡眠に重要です。入浴も運動同様にタイミングが重要で、就寝の2~3時間前の入浴がベストです。
深い睡眠を取るためには、入眠の直前が良いという話もありますが、直前ですと寝つきを悪くしてしまう可能性があるため、就寝の2〜3時間前を目安に入眠すると高い効果が期待できます。
湯温は体温を0.5℃上昇できるように、38℃のお湯で25〜30分、42℃のお湯で5分程度を目安に浸かりましょう。
半身浴の場合は、約40℃のお湯で30分ほどを目安にすると寝付きの効果が期待できます。
(参考:e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」、参考:e-ヘルスネット「不眠症」)
医療機関への受診がおすすめ
前述でおすすめした方法を試しても全く改善されない方は、医療機関で受診してみることをおすすめします。
朝起きられないだけで病院に行くのは気が引けますが、睡眠障害やうつ病などの病気が隠れている可能性があります。不眠症やうつ病・睡眠時無呼吸症候群などは自分で治すことが難しい病気です。
どこを受診すればよいか分からない場合は、かかりつけ医に一度相談してみましょう。専門の医療機関を紹介してもらえます。また、話すだけで気持ちが軽くなることもあります。
(参考:e-ヘルスネット「不眠症」)
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世代別に、朝起きられない原因・病名・対処法を解説しました。この記事が朝起きられない原因と対処法の理解と、朝の目覚めがよくなる手助けになりますように!