どうして人は眠るのか、そのいちばんの理由は脳や体の疲れをとるため。その言葉通り、通常は、一晩ぐっすり眠れば疲れは軽減します。でも、最近、睡眠時間が短くなっているせいか、眠っても疲れがとれない、疲れているはずなのに眠れないという人が増えているようです。そこで、今回は、”疲労”について考えてみましょう。

20150615

疲れを感じることは生命を守る大切なアラーム

疲れを感じることは、活動を制限させて体を休めるように知らせる、いわばアラームのようなもの。そこでしっかりと栄養や睡眠をとることにより、体のダメージは修復され、元の元気な状態に戻ります。

そういったシグナルを発することができるのは、体にホメオスタシス(恒常性:体を最適な状態に保たせる働き)が備わっているおかげ。ボールをグッと押すと、元に戻ろうと反発しますが、その力こそが生命を守るために備わっているホメオスタシスです。動く→疲れる→自然に眠くなる→ぐっすり眠れる→翌日は疲れが解消→再び活動ができるといった具合に、体には本来、マイナスをチャラにしてバランスを保つ力が備わっているのです。その働きによって夜眠り、朝起きるというリズムも促されています。

疲労を無視するのは危険

でも、最近、一晩眠ってもなかなか回復しない重度の疲労感を訴える人や、疲れているはずなのにそれを感じとることができないといった人が増えているようです。

その大きな原因は、前回の記事でもご紹介したストレスとオーバーワーク。それらにより交感神経が過緊張を起こしたり、脳が過度に疲労して疲労を感じるセンサーが麻痺してしまうことが。その結果、疲れているのに神経が高ぶって眠れなくなったり、寝ても寝ても疲れがとれなくなったり(実は眠りの質が低下している)、さらには、一気に脱力してやる気を失ってしまったりと、アンバランスな状態に陥ってしまうことがあります。こういった状態を慢性疲労や慢性疲労症候群といいます。それはやがて、不眠症、心身症をはじめといった病気につながるだけでなく、最悪な場合は、過労死につながってしまうこともあるので気をつけましょう。

疲労の要因

疲労の要因としては、身体的疲労(仕事のしすぎ、遊びすぎ)・精神的ストレス・紫外線・活性酸素・大気汚染・睡眠不足などがあげられますが、やはり、精神的ストレスがもっとも影響が大きく、性格的にストレスを感じやすい人はより注意が必要です。

 

現代人の仕事は、体を動かすよりも目を酷使する(前回の記事でも述べたように、目の疲労はダイレクトに脳疲労につながります)ことが多く、時間に追われ、精神的ストレスがたまりやすいのが特徴。そのため、体を動かす仕事よりも、何倍も疲れがたまる可能性があります。

 

経営者側からすれば、疲れを見せない社員のほうが優秀だし、働く本人も評価を得るためについつい頑張ってしまいがち。とくに、生真面目で責任感が強い人は、たとえ面白くない仕事や自分の能力以上の仕事でも無理を押してこなしてしまうはず。しかし、そんな生活を続けていると、慢性疲労、慢性疲労症候群*といった病的な疲労をため込むことになりかねません。

 

運動後のように、筋肉の傷みや、血中に乳酸などの疲労物質がたまる身体的な疲労は、栄養を摂って眠れば比較的早くに回復しますが、脳の疲労は、よりしっかりと睡眠をとり、心も体も休めることが必要。脳に疲労がたまると、自律神経系、免疫系、内分泌系、血流や血圧など、体のいろいろな面に影響しやすくなるためです。寝ても寝ても疲れがとれない、疲労感がずっと続いているという人は、たかが疲労と甘くみず、すぐに生活を見直すことをオススメします。

 

*慢性疲労症候群は、自覚的な疲労が半年以上続き、かつ、日常生活に支障がある場合をいいます。慢性疲労症候群の特徴としては、微熱や悪寒、頭痛など、風邪とよく似た症状が起きたり、リンパの腫れ、脱力感、関節痛、思考力の低下、抑うつ状態、睡眠障害などの症状が見られます。疲労によって免疫機能が低下したところにウイルスが悪さをするため、症状がひどくなるともいわれていますが、燃えつき症候群や過敏性腸症候群などもこの中に入ります。原因としてはやはり、ストレスが大きいようです。そのためか、ストレスに弱い10代後半から30代に罹患者が多いようです。

疲労回復&改善のポイント

現代人のストレスは精神的なストレスが多く、PCや携帯など、目を酷使することも増えています。実は、近くを見るのに意識を集中させることは、眼精疲労だけでなく、脳を疲労させる原因になります。

  •  疲労はためすぎず、その日のうちに解消することを基本にしましょう。たかが肩こりも放置するのは禁物。PC作業による肉体疲労だと思いがちですが、目の酷使と交感神経の緊張によって筋肉が硬くなることが原因であることが多いので、脳疲労のサインとしてとらえましょう。

 

  • 平日の睡眠時間が5時間未満の人は、最低6時間は確保するように改善を! 平日4時間、週末8時間なんて生活をしている人は、生体リズムが崩れ、疲れもうまく解消できなくなるので気をつけて。

 

  • アロマテラピー、エステ、温泉旅行、お風呂、音楽、ショッピングなど、自分がリラックスできたり楽しめたりすることを見つけ、積極的に実践しましょう。笑 いはNK細胞を活発にして免疫力をあげるのに効果的だといわれているので、生活の中に、笑いやユーモアを取り入れることもオススメです。

 

  • ずっとデスクワークばかりという人は、体を動かしましょう。肉体的な疲労に促され、深い眠りが得やすくなります!

 

食事は3食、バランスよい食事を心がけて。タンパク質、糖質のほか、ビタミン、ミネラル(タンパク質は細胞の原料になりますし、糖質は脳のエネルギー源に。また、ビタミンC、ビタミンB12などは疲労回復に効果的です)もしっかり摂るようにしましょう。

 

この記事を書いた人
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ぐっすり睡眠&スッキリお目覚めのツボ[連載終了・全70回]

睡眠改善インストラクターによる快眠&めざめのヒント[連載終了・全70回]
Written by

睡眠改善シニアインストラクター 竹内由美

日本睡眠改善協議会認定・睡眠改善シニアインストラクター。日本産業カウンセラー協会認定・産業カウンセラー。
米国Mary Baldwin College心理学科卒業。フリーの編集ライターとして美容や健康などに関する記事に携わり、その経験から睡眠やメンタルヘルスの重要性に気付き、上記の資格を取得。忙しい現代人にこそ良質な睡眠が大切だと、雑誌や講演活動などを通して睡眠について伝えている。
著書には「眠りダイエット」(文芸社)がある。

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