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日常が壊れる時。心がざわつく異色のミステリー短篇集『事件の予兆』

 

朝読書におすすめの本をご紹介する『まっこリ~ナのCafe BonBon』。小説やエッセイ、暮らしや料理の本など心に効く本をセレクトしています。

今日の「まっこリ~ナのカフェボンボン」の本棚は、『事件の予兆』

井上靖、大岡昇平、遠藤周作、大庭みな子ら、非ミステリーの作家たちのミステリーアンソロジー。文学的な香り漂うミステリアスな作品をお楽しみください。


事件の予兆 文芸ミステリ短篇集
編者:中央公論新社
出版社:中央公論新社

小沼丹の「断崖」には、旅先の温泉で主人公が遭遇した出来事が描かれている。温泉旅館の窓から見える風景に男はある違和感をもつ。誰もいないはずの別荘の窓に光が灯っているのを発見したのだ。闇のなかの灯影は、果たして「事件の予兆」なのか。

ただならぬことが起きそうな気配。不穏な空気が漂う作品が並びます。登場人物もみな、どこかとらえどころがないのです。

野呂邦暢の「剃刀」は、海辺の小さな町を舞台にした作品。町から町へと旅をするセールスマンが、行きずりの町で、しばらく腰をおろして休むために理容店に入る。髪を切るのはミステリアスな雰囲気の女。男は目を閉じてハサミの鳴る音を聞いている。そのうち男はふと思い出す。去年この近くまで来たときに人殺しがあったことを。不安を感じつつも、女に髭を剃られて男はだんだんいい気持ちになっていく……。先客のひとりもいない店に大きく響くハサミの音を想像するとぞわぞわします。鏡が曇っていて女の姿が見えないのも恐ろしい。

井上靖の「驟雨」、大岡昇平の「春の世の出来事」、遠藤周作の「生きていた死者」、野坂昭如の「上手な使い方」など十篇を収録。昭和を代表する作家たちの魅力的な作品に出会える一冊です。夏の昼下がりにミステリーをぜひどうぞ。

ラブ&ピースな一日を。
Love, まっこリ〜ナ

「まっこリ~ナのカフェボンボン」を読んでくださってありがとうございます。「カフェボンボン」が心ときめく本との出会いの場となりますように。

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小説から絵本まで、編集者が選ぶ”朝読書”におすすめの1冊
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まっこリ〜ナ

編集者・ライター

出版社勤務を経てフリーランスに。図鑑や写真集、子どもの本や雑誌などの編集に携わる。本がくれる愛のチカラを糧に生きる日々。いちばん好きな本の主人公は長くつ下のピッピ。
趣味は草花園芸、編み物、ランニング、スポーツ観戦。

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