朝読書におすすめの本をご紹介する『まっこリ~ナのCafe BonBon』。小説やエッセイ、暮らしや料理の本など心に効く本をセレクトしています。
今日の「まっこリ~ナのカフェボンボン」の本棚は、『注文の多い料理小説集』。
柚木麻子、伊吹有喜、井上荒野ら人気作家7人が「料理」をテーマに豪華競演。食にまつわる味わい深いアンソロジー、新刊です。おうち時間を楽しむのにぴったりの一冊をどうぞ。
『注文の多い料理小説集』
著者:柚木麻子 、伊吹有喜 、井上荒野 、坂井希久子、 中村航 、深緑野分、柴田よしき
出版社:文藝春秋
「おいしかった。ごちそうさま」では終わらない。どの物語もあとからじんわり効いてくる。もう一度、味わってみたくなります。
食卓で夫婦の想いが交錯するのは、井上荒野の「好好軒の犬」。小説家の妻が夫のために心をこめて料理する。昼食には、蕗の薹の味噌汁、鮪の山かけ、出し巻き卵、玉ねぎと牛肉の切り落としをソースで炒めたもの。夕食には、蕗の薹、れんこん、芝海老のかき揚げ。それからのっぺい汁と菜の花のお浸しに、酒の肴もこしらえる。夫は「ああ、うまい」と言いながらも上の空。手の込んだ料理が並べば並ぶほど、二人の間には不穏な空気が流れはじめて——。
誰かの人生を予期せぬ方へ変えてしまう料理もあれば、幸福のしるしのように思える食べものもある。もしあの日、あの一皿と出会っていなかったら。
お砂糖たっぷりの卵焼きとエスプレッソ、食堂のカレーライスと福神漬、蜂蜜バターの甘く優しいふわふわパン。そそられるメニューはいろいろあるけれど、私がいちばん食べたいのは、やっぱり塩むすび。「土鍋で炊きあげたつややかな白飯を極上の塩で結べば、具はいらない」(「夏も近づく」伊吹有喜)こんなおむすびを新緑の風に吹かれて食べたらどんなにおいしいだろう。初夏のさわやかな物語が、みずみずしく心にしみわたります。
ラブ&ピースな一日を。
Love, まっこリ〜ナ
「まっこリ~ナのカフェボンボン」を読んでくださってありがとうございます。「カフェボンボン」が心ときめく本との出会いの場となりますように。
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