朝読書におすすめの本をご紹介する『まっこリ~ナのCafe BonBon』。小説やエッセイ、暮らしや料理の本など心に効く本をセレクトしています。
今日の「まっこリ~ナのカフェボンボン」の本棚は、『家族八景』。
人の心をとことん覗いてみたい。そんな欲望に応えてくれるのがこの小説。他人の心の内を読み取ることのできるヒロインが登場する、筒井康隆の傑作です。
『家族八景』
著者:筒井康隆
出版社:新潮社
十八歳の火田七瀬は生まれながらの精神感応能力者(テレパス)。他人の心を読みとる能力が備わっています。
住み込みのお手伝いさんとしてさまざまな家庭で働きながら、七瀬は住人の心をそっと覗いてみるのです。人の意識を感知するために「掛け金をはずす」と、相手の思考がどんどん流れ込んでくる。家族の心の裏側が浮かび上がってきます。
ホームドラマのように明るい会話を続ける夫婦や子どもたち。うわべは幸せな家庭に見えるのに、七瀬が読みとる家族の声は、欲望や嫉妬、軽蔑や憎しみにあふれていて——。
「もっと、おつゆを召し上がる」(殺してやりたいわ)「うん、貰おう」(なんだ。その声色は)「ナナちゃん。おつゆ、もう一度温めてきてね」(殺してやろうかしら)心のなかで罵り合いながら平然と食事を続ける夫婦に戦慄します。
住人が七瀬にどんな気持ちを抱いているかもわかってしまう。「この子の皮膚がほしい。この子の年齢がほしい」七瀬の若さに嫉妬した奥様のこんな心理さえも読み取ってしまうのです。
「無風地帯」「水蜜桃」「紅蓮菩薩」など、七瀬が移り住む八つの家庭を描きます。健気なヒロインが本当に魅力的。その圧倒的な能力に魅せられます。
筒井康隆さんの本、以前ご紹介したこちらもぜひ。
*『旅のラゴス』
ラブ&ピースな一日を。
Love, まっこリ〜ナ
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