(この物語は…毎朝のヨガ習慣をはじめてから108日目を迎えた、ヨガが好きなOL 紗季に、久々に起こる、恋と仕事の変化。朝のヨガスタジオで巻き起こる男女のハートフルなラブストーリー。小説のストーリーに合わせ、毎週おすすめヨガポーズをご紹介します。
Week 5は、主人公である紗季との交際をスタートさせた優斗の視点でストーリーが展開します!)
Vol.33 Week 5 「39歳の初恋」 (5)恥じらいの表情?懺悔の表情?
こどもの頃、僕は間違いなく幸せだった。
与えられたもの、大好きなもの、幸せをくれるもの、それらが、亡くなったり、形を変えたとき、自分の中身も変わってしまった。
外側の変化があっても、自分が変わらない訓練を、恵まれすぎていた僕は知らずに、いまのいままで逃げてきたのだ。
紗季には調子よく
「くだらない夢だって大切なんだ」
なんて言ったものだ。
僕は本物のピエロだ。
紗季は、普段通り、穏やかな表情で現れた。僕を見たとき、なんとも言えない表情で「おはよう」優しく言った。
昨日の夜を知らなかったら、恋人同士になりたての2人の恥じらい感を必要以上に僕は楽しんだかもしれないが、それは恥じらいではなく懺悔の表情なのではないかという猜疑心にさいなまれもした。
アレックスのクラスは今日は少し饒舌だった。
「最初から、出来るなんてことはないのだから」
なんどもなんどもその言葉を繰り返す。
今日は、チャレンジングなポーズが多かったのだ。アレックスがとてつもなくすごいヨガティーチャーであることを、僕だけ知っていていいのだろうか。
ヨガが終わったあと、
「今日はやけに、チャレンジングなことが多かったな、腕がガクガクいってるよ」
紗季に普段通りに話しかけると
「アレックス、なにか感じ取ってたのかな。優斗さん、この後朝ご飯いけますか?」
「もちろん」
僕は余裕そうに振る舞った。
「わたし、真治さんと2年前までお付き合いしていたんです。別れることすら上手くできなくて、お互いなんとなく引きずったまま、彼が帰国して向き合わざるを得なくて」
「そう」
内心僕は、アレックスのように見返りを求めずにいられるのか、不安だった。
「でも、昨日、しっかり気持ちに整理をつけました。優斗さんのおかげです」
え?僕は予想外の答えに、拍子抜けした。
(つづく)
今週のおすすめヨガ「チャイルドポーズ」
Week 5のおすすめは「チャイルドポーズ」。
ヨガでは、お休みや癒しのポーズとしても使われます。それだけ、リラックスすることができるということです。ただ単なるお休みではなく、呼吸を落ち着かせ、内臓を刺激し、力を抜くことができます。
出来るだけ、背中を緩めて自由な背骨を作り、呼吸に注目します。呼吸が整うことで、さらに骨・筋肉ともに動かすことができ、自由な上体を作ることができますよ!苦しい時、休みたい時、朝起きるときにおすすめ。
「チャイルドポーズ」の流れ
- 膝をたて、両膝に均等に体重がかかるようにしまっすぐ立つ。また、足先の親指と親指を重ね合わせておく。
- 両かかとにおしりをおとし、上体はリラックス。この時腰が後に落ちてしまわないように、注意しましょう。息を吐きながら、ゆっくり膝を床の方へ向かって開いていきます。
- 息を吐きながら、上体を前傾します。なるべく前方へ手をひっぱります。
(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)
★この物語の登場人物
新城紗季(しんじょうさき/30歳)プロダクトブランド販売会社のマーケティング部につとめる。この物語の主人公。
アレクサンドル・ハミルトン(アレックス)(38歳)フランス系アメリカ人。ヨガスタジオを経営。
相場優斗(あいばゆうと/38歳)外資系投資銀行の行員。
桜井真治(さくらいしんじ/35歳)紗季と同じ会社でニューヨーク店勤務。紗季の元恋人。
東谷しおり(ひがしやしおり/25歳)ヨガ仲間のひとりで、紗季の会社の事務系OL。