(この物語は…毎朝のヨガ習慣をはじめてから108日目を迎えた、ヨガが好きなOL 紗季に、久々に起こる、恋と仕事の変化。朝のヨガスタジオで巻き起こる男女のハートフルなラブストーリー。小説のストーリーに合わせ、毎週おすすめヨガポーズをご紹介します。
Week 4は、ふたたび主人公である紗季の視点でストーリーが展開します!)
Vol.26 Week 4 「朝ごはんでデートを」 (5)ニューヨークの朝ごはん
あの雪一面の世界で、真治と話したときのことを思い出していた。しっかり決別ができたのだ、あそこで。
そして、胸郭に息をこれ以上ないほど、吹き込んだとき、12番目の肋骨がいつもより動く感覚があった。呼吸が楽になって、心が軽くなった。
目はつぶっていたけど、うっすら涙を感じた。
そのあと、動けない気がして、そのままシャバアサナにはいった。アレックスが、そっとブランケットをかけてくれた。
ありがとう、アレックス、心でそう呟いた。
こうして何人もの大切なひとが、傷を癒してくれるんだ。だから、傷をおうことは悪いことじゃない。今は真治に感謝もできる。
どれくらい、シャバアサナでいただろう。わたしはゆっくり起き上がり目を開くと、3人はすでに片付けを初めていた。
「紗季、ゆっくりできた?」
「アレックス、ブランケットありがとう。おかげで新しい1年、すっきり始められる」
「紗季は自分で解決したようだね、僕を頼っても良かったのに」
生まれ変われるなら、アレックスのような人になりたい。ちょっと報われないかもしれないけど、きっと多くの人の心を癒せるのだろう。
優斗さんとの朝ごはん新年会が、少し楽しみになってきていた。
魚のポーズのとき、呼吸がしっかりできて、本当に身体が楽になっている。無理やりにでも、呼吸の力をつかって骨を動かすのは良いことだと思う。
「どこへ行きます?」
「ル・パン・コディティアンとか!」
「わ、いいですね」
「OK、じゃあ、芝公園の東京プリンスホテルまで」
優斗さんは、あっという間にタクシーを止めて、運転手に指示した。
ル・パン・コディティアンはベルギー発のベーカリーレストランだけど、ニューヨークでもものすごく人気のある店だ。わたしもよく通っていた。
色とりどりの野菜がたっぷりのタルティーヌを横目に、ひと口目はサクサクのクロワッサン。
ニューヨークを思い出す。ユニオンスクエアのベンチでサンドイッチを食べたり、グリニッジビレッジのお店は、ヨガについて語り合う場だったりして。
「紗季さんよく食べるね」
「ヨガしたあとって、ほんと美味しいんですよね。ヨガ始めた頃は逆に太りました。あまりにご飯が美味しくて」
「健康的で良いね」
たわいもない会話をして、あっと言う間に1時間が過ぎた。そろそろ出なきゃと思っているとき、あごを持ち上げられた。
「さあて、答えは?」
「まさか考えてないわけないよね」
(つづく)
今週のおすすめヨガ「さかなのポーズ」
Week 4のおすすめは「さかなのポーズ」。
胸を開き、頭皮を刺激するポーズで、固くなりがちな背中を動かし、胸を開くことで呼吸がとても楽になるでしょう。冬の間は、頭皮も乾燥したり、うつむき癖でひっぱられたり、酷使しています。
明日に向かう活力をもらえるポーズです。
「さかなのポーズ」の流れ
- 足を腰幅に開き、全身の重みを床に素直に落とします。
- 手を組み、お尻の下におきます。同時に肩も背中の下にしまうイメージで、内側に入れます。
- 胸を天井からつられているイメージで、引っ張り上げます。最後に頭頂部を床につけ静止。
(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)
★この物語の登場人物
新城紗季(しんじょうさき/30歳)プロダクトブランド販売会社のマーケティング部につとめる。この物語の主人公。
アレクサンドル・ハミルトン(アレックス)(38歳)フランス系アメリカ人。ヨガスタジオを経営。
相場優斗(あいばゆうと/38歳)外資系投資銀行の行員。
桜井真治(さくらいしんじ/35歳)紗季と同じ会社でニューヨーク店勤務。紗季の元恋人。
東谷しおり(ひがしやしおり/25歳)ヨガ仲間のひとりで、紗季の会社の事務系OL。