(この物語は…毎朝のヨガ習慣をはじめてから108日目を迎えた、ヨガが好きなOL 紗季に、久々に起こる、恋と仕事の変化。朝のヨガスタジオで巻き起こる男女のハートフルなラブストーリー。小説のストーリーに合わせ、毎週おすすめヨガポーズをご紹介します。
Week 3は、紗季の元恋人である桜井真治の視点でストーリーが展開します!)
Vol.16 Week 3 「ニューヨークの真実」 (2)25歳と30歳の女性の差
「紗季」「紗季さん」
僕が呼び止めようとした瞬間、同時にしおりの声が重なった。その呼び止める声の方が、力があって、僕の心はまたピエロになった。
「朝っぱらから、こんな話もなんですが、わたし真治さんのこといいなって。でも、紗季さんとのことがあって、なかなか振り向いてもらえないんです」
「ちょっと、ほんとに朝っぱらから何の話!?」
「紗季さん、わたしたち朝っぱらからヨガとか」
「既に普通じゃないんですから、腹割って!腹筋じゃないですよ。って紗季さんもう割れてるけど」
きゃきゃきゃっと笑うと、しおりはまた一瞬で、普段の様子に戻り、スタジオに戻っていった。
「なんなら頭も心も割って!」
いつも女の方が一枚上手だ。
いつから僕は、若さを求めなくなり、見栄を気にしなくなったのだろう。
「紗季、時間いいかな?」
僕はただ、10も若い女の子に用意された船に乗った。
「じゃあ、アレックス、あしたの朝」
「優斗、ありがとう、また」
今度は調子の良い男の声がして、その船が波に流されるように、凍っていた空気が動き出した。
「ごめん、わたしは話すことないの。じゃあ会社で」
紗季が歩き始めたとき、優斗という男がスタジオから出てきた。
「お疲れさまです。桜井真治さん、でしたよね。仲間が増えてありがたいよ。あしたの朝、スタジオで!」
「こちらこそ、また」
僕たちはビジネスライクな挨拶を交わして、次に優斗は紗季に向かって大声で呼びかける。
「紗季さん、駅までご一緒しません?」
紗季は既に10メートルくらい進んでいたが、振り返って笑顔をみせた。
紗季の表情がとてもまぶしかった。ヨガをした後だからか、東からの太陽を浴びていたからか。いや、どんな理由でもない、ただ輝いていた。
ここ数日、彼女をずっと目で追っている。距離は近づいたのに、すぐそこに手を伸ばせば届くのに、まったく捉えられない。
背後の気配をまったく感じていなかった僕は、背中をドスっとたたかれて我に返った。
「真治さん、ドンマイです。会社いきましょう」
「ありがとう、支店とテレカンがあるから、電話をしながらタクシーで会社にいくよ」
エクスポの準備もほぼ揃う。年があけたら、早めにニューヨークに戻ろう。
次こそ、もう紗季のことは忘れればいい。
その前に一度だけでも、あの頬に手を触れたい。
(つづく)
今週のおすすめヨガ「三角のポーズ」
Week 3のおすすめ「三角のポーズ」も、先週の「木のポーズ」同様、ヨガの代表的なポーズ。
腕から体側、脚までをバランスよく伸ばし、大地を踏みしめる力強いポーズ。滞りがちな股関節周辺の関節の動きや筋肉を動かし、リンパの流れや血流も良くします。
股関節の位置が上手くはまると、きつさがなくなり、関節への心地よい刺激で、身体の中がぽかぽかしてきます。
「三角のポーズ」の流れ
- 足裏全体を床に根をはるようにイメージし、ひざ頭、うちももを引き上げ、骨盤まで足の裏からの意識を繋げていきます。上体は、緊張させず、リラックス状態を意識します。
- (1)の状態から、左足を大きく一歩後方へ進め、マットに対し、45度左側に足先を開きます。左足うら全体で、床を押します。この時、親指からうちももを特に意識をおき、うちももを内側に少しひねるようにし、左の骨盤を前に押し出します。
- (2)の状態から息を吐きながら、左の骨盤を今度は真横に開いていきます。左足先は、マットに対し90度に開き、両手も開きます。
- 骨盤を左側にずらし、右手を前方にひっぱられるように移動させます。左の骨盤と右手先の感覚が繋がるように意識します。反対側も同様に行います。
- 右手を右足に落とし、左手を天井に上げ、左胸から天井へひっぱられるようにカラダを広げます。
(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)
★この物語の登場人物
新城紗季(しんじょうさき/30歳)プロダクトブランド販売会社のマーケティング部につとめる。この物語の主人公。
アレクサンドル・ハミルトン(アレックス)(38歳)フランス系アメリカ人。ヨガスタジオを経営。
相場優斗(あいばゆうと/38歳)外資系投資銀行の行員。
桜井真治(さくらいしんじ/35歳)紗季と同じ会社でニューヨーク店勤務。紗季の元恋人。
東谷しおり(ひがしやしおり/25歳)ヨガ仲間のひとりで、紗季の会社の事務系OL。