【朝の恋愛小説:あしたの朝、ヨガスタジオで。Vol.10】Week 2(3)ヨガスタジオに訪れた一瞬で心を掴む男

 

(この物語は…毎朝のヨガ習慣をはじめてから108日目を迎えた、ヨガが好きなOL 紗季に、久々に起こる、恋と仕事の変化。朝のヨガスタジオで巻き起こる男女のハートフルなラブストーリー。小説のストーリーに合わせ、毎週おすすめヨガポーズをご紹介します。

Week 2は、主人公である紗季のヨガ仲間であり、同じ会社の事務系OLしおり視点でストーリーが展開します!)

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Vol.10 Week 2 「いつも彼女を好きな人を好きになる」 (3)ヨガスタジオに訪れた一瞬で心を掴む男

その声がするスタジオの入り口の方へ、そこにいる全員が振り返った。

予想を裏切るイケメン。朝のヨガスタジオに、絶対いないタイプの。

アレックスが彼と片手ハイタッチをすると、わたしたちに紹介した。

「みんな、彼は優斗。昔の会社の同期」

「どうも、ヨガはじめてなんで、色々教えてください、よろしゅう」

この優斗が数ヶ月かけて築いてきたヨガクラスの雰囲気を一変させた。

アレックスが、「キャットポーズ」といえば、「にゃー」と言っておどけてみせて、みんなの笑いを誘う。

元々は新体操出身の紗季さんが、片脚軸で背中を反り、もう一方の足を天井の方にあげてキープするダンサーポーズをみせれば、

「キャメルスピンからの、ビールマンスピン、ポジションがキレイです」

とフィギュアスケートの実況解説風に盛り上げて。

「ちょっと優斗さん、集中できないから」

「どっちかっていうと、荒川静香じゃなくて、八木沼純子風ね」

紗季さんはツボにハマったらしく、珍しく引き笑い。もし紗季さんがフィギュアスケートファンだって一目で分かっていたとしたら神業だ。まさか、そこまでとは思うけど。

今日のクラスは、騒がしい。ただただ、自然に笑っているうちに、わたしのモヤモヤは消え去っていた。優斗ってひと、何者だ。

「優斗、ほんとにグレート」

「But, Please make silence during this pose.」

静寂を創り出すとき、アレックスは決まって英語を使う。そして深く息を吐き出したと同時に温かく深い声で静かに響きを放つ。

「ナタラジャアサナ」

日本語だと、木のポーズのこと、片脚で立つこのポーズは、集中しないとぐらついてしまう。

いつものヨガスタジオの静けさに戻ると、なんだか懐かしい気持ちさえした。空気が変わっている間、時間の進み方も違ったような、空気を支配する力の大きさを感じた。

アレックスは言う。

「ぐらついても構わないから、今日は目を閉じて。ぐらつきを押さえようと集中すること自体が、自律神経に影響を与えます。いつのまにか、こころは落ち着いてくる、そうすると身体もふっと力が抜けて安定する」

わたしたちは、彼が言う言葉に誘導され、いつのまにか、そこにいた5人すべての動きがピタっと止まった。目を閉じているけど、その静寂で分かる。

アレックスのインストラクションは魔法だ。

優斗の話術とアレックスの魔法。わたしたちはその贅沢をうっすら理解していた。

(つづく)

今週のおすすめヨガ「木のポーズ」

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Week 2のおすすめ「木のポーズ」はヨガの代表的なポーズ。

片脚を軸足にしてバランスをとります。しっかり地面を足裏で感じ、上半身と下半身を繋げることで、自分の身体を安定させます。最初はぐらつきますが、集中しようとするだけで自律神経のバランスがとれてくると言います。

心がざわついているとき、一本足で立ってみようとすることが、身体をととのえ、神経をととのえ、良い決断ができるかも。みぞおちの部分に手を当ててみるのもいいです。前に進むためのチャクラがそこにあります。

「木のポーズ」の流れ

  1. 両足に均等に体重をかけ、頭頂部までまっすぐ伸びるイメージで立つ。
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  2. 右足の裏を、左足の付け根につけ、胸の前で合掌。この時、骨盤が左側にずれてしまわないように注意。どうしてもぐらついてしまう方は、付け根でなくても大丈夫!(けが防止のため膝以外にセット)
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  3. 息を吸いながら、胸の前の手を天井まで回し持っていき、両手を重ねます。目線も両手先の方を見つめます。この時、首をつめてしまわないように注意しましょう。
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  4. 息を吐きながら、両手を広げます。小指をご自身の方へ内転させてみましょう。肩が開き、胸が開いてきます。ここで呼吸を整えます。3呼吸ほどキープしたら、ゆっくり手足を元に戻し、反対側も同様に行いましょう。
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(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)

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★この物語の登場人物
新城紗季(しんじょうさき/30歳)プロダクトブランド販売会社のマーケティング部につとめる。この物語の主人公。
アレクサンドル・ハミルトン(アレックス)(38歳)フランス系アメリカ人。ヨガスタジオを経営。
相場優斗(あいばゆうと/38歳)外資系投資銀行の行員。
桜井真治(さくらいしんじ/35歳)紗季と同じ会社でニューヨーク店勤務。紗季の元恋人。
東谷しおり(ひがしやしおり/25歳)ヨガ仲間のひとりで、紗季の会社の事務系OL。

 

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朝の小説シリーズ

毎朝読みたい小説シリーズ「やっぱり朝は、二度寝が好き。(完)」「シンデレラの朝ごはん(完)」
Written by

石垣モンブラン

幼少期から創作好きで、3歳児で替え歌発表(笑)、小学時代に学習発表会の脚本、絵本を制作、中学から新体操やダンスの振付をはじめる。現在は、小中学生のミュージカル劇団「リトル・ミュージカル」主宰。台詞をこどもたち全員で創るという他にはないミュージカルの脚本原案、作詞作曲、振付を担当。だけど大人の恋愛模様が大好き。ライトノベルや映像脚本も執筆し続ける。

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