【朝の恋愛小説:あしたの朝、ヨガスタジオで。Vol.9】Week 2(2)幸福のピケティ論?

 

(この物語は…毎朝のヨガ習慣をはじめてから108日目を迎えた、ヨガが好きなOL 紗季に、久々に起こる、恋と仕事の変化。朝のヨガスタジオで巻き起こる男女のハートフルなラブストーリー。小説のストーリーに合わせ、毎週おすすめヨガポーズをご紹介します。

Week 2は、主人公である紗季のヨガ仲間であり、同じ会社の事務系OLしおり視点でストーリーが展開します!)

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Vol.9 Week 2 「いつも彼女を好きな人を好きになる」 (2)幸福のピケティ論?

固まっていたら、大笑いしている桜井さんが近づいてきた。そして、わたしの頭をポンポンと叩いて、

「日本に住んでるくせに、妖怪ウォッチ見てないんだ」

「オレと紗季とは、ニューヨークにいた頃に付き合ってたの。ちょっと誤解があって別れてしまって、正直なところ、オレはまだひきずってるってとこ。

この話を信じるか信じないか、部のみんなに言いふらすか言いふらさないかは、up to youってことで、一旦ごめーん」

即座に反応できない自分が憎い。完全に先手を打たれてしまったって、頭が良くないわたしにだって分かる。

情報戦線の交渉の有効なカードを何一つ持てないまま、うわさが広まれば犯人はまっさきに自分と疑われる「容疑者第一候補カード」だけ手渡されてしまったわけで。

桜井さんは、きっと、わたしの黒い部分を見破ったのだ。

「もんげー!」

桜井さんが真顔で振り返る。

「そんなの分かってたずら!」

わたしは妖怪ウォッチのコマさんの言い回しを真似て、笑って背中を向けてやった。

どうして、いい男は、紗季さんのことが好きなんだろう。

「おはようございます、紗季さん」

6:00AMのヨガスタジオで、わたしは、紗季さんの下から上までをじっくり見つめた。

「おはよう、しおり。やめてよ、じろじろ見て!」

「ごめんごめん、一旦ごめーん」

「え?ギャグ?水木しげる?なに?」

「紗季さん、敏腕マーケッターがそんなことでいいんですか。はいはい、検索検索。わたし、今日はちょっと機嫌悪いんで」

どういうことよーと言いながら、紗季さんがご機嫌でヨガスタジオに入ってくるところを見つめていたアレックスのことも、わたしは見逃さなかった。切ない表情なのに、いつも本当に愛情いっぱいの笑顔で紗季さんを包んでいることを。

本当は焦っていたんだ、何もない自分に。もう25歳だし。

このスタジオは大好き。でも、次第にどんどん、みんなのいい人ぶりが、苦しくなってくる。

ここに集うひとは、恵まれた環境で、恵まれたスキルや人間性を持っているから、いいひとでいられるんだ。

分厚い本を読んだわけじゃないから詳しいことは知らないけど、ピケティが言ってるじゃない。豊かな人が豊かになる。幸せだって、幸せなひとほどもっと幸せになる。

ヨガをしてから、こころもからだも健康になれたと思っていたのに、最近は自分のことがどんどん分かってきて、くらくらする。

やめようかな、ヨガ・・・。

「おはようございます」

どんよりしているわたしの耳に届いたのは、聞き慣れない深みのある声だった。

(つづく)

今週のおすすめヨガ「木のポーズ」

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Week 2のおすすめ「木のポーズ」はヨガの代表的なポーズ。

片脚を軸足にしてバランスをとります。しっかり地面を足裏で感じ、上半身と下半身を繋げることで、自分の身体を安定させます。最初はぐらつきますが、集中しようとするだけで自律神経のバランスがとれてくると言います。

心がざわついているとき、一本足で立ってみようとすることが、身体をととのえ、神経をととのえ、良い決断ができるかも。みぞおちの部分に手を当ててみるのもいいです。前に進むためのチャクラがそこにあります。

「木のポーズ」の流れ

  1. 両足に均等に体重をかけ、頭頂部までまっすぐ伸びるイメージで立つ。
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  2. 右足の裏を、左足の付け根につけ、胸の前で合掌。この時、骨盤が左側にずれてしまわないように注意。どうしてもぐらついてしまう方は、付け根でなくても大丈夫!(けが防止のため膝以外にセット)
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  3. 息を吸いながら、胸の前の手を天井まで回し持っていき、両手を重ねます。目線も両手先の方を見つめます。この時、首をつめてしまわないように注意しましょう。
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  4. 息を吐きながら、両手を広げます。小指をご自身の方へ内転させてみましょう。肩が開き、胸が開いてきます。ここで呼吸を整えます。3呼吸ほどキープしたら、ゆっくり手足を元に戻し、反対側も同様に行いましょう。
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(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)

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★この物語の登場人物
新城紗季(しんじょうさき/30歳)プロダクトブランド販売会社のマーケティング部につとめる。この物語の主人公。
アレクサンドル・ハミルトン(アレックス)(38歳)フランス系アメリカ人。ヨガスタジオを経営。
相場優斗(あいばゆうと/38歳)外資系投資銀行の行員。
桜井真治(さくらいしんじ/35歳)紗季と同じ会社でニューヨーク店勤務。紗季の元恋人。
東谷しおり(ひがしやしおり/25歳)ヨガ仲間のひとりで、紗季の会社の事務系OL。

 

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朝の小説シリーズ

毎朝読みたい小説シリーズ「やっぱり朝は、二度寝が好き。(完)」「シンデレラの朝ごはん(完)」
Written by

石垣モンブラン

幼少期から創作好きで、3歳児で替え歌発表(笑)、小学時代に学習発表会の脚本、絵本を制作、中学から新体操やダンスの振付をはじめる。現在は、小中学生のミュージカル劇団「リトル・ミュージカル」主宰。台詞をこどもたち全員で創るという他にはないミュージカルの脚本原案、作詞作曲、振付を担当。だけど大人の恋愛模様が大好き。ライトノベルや映像脚本も執筆し続ける。

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