今日のカフェボンボンの本棚は、『神も仏もありませぬ』。
名作絵本『100万回生きたねこ』の作者・佐野洋子が日常をつづった傑作エッセイ集。大らかに豪快に生きた人のことばが心に深くしみる。そして、生きることの切なさと喜びがわきあがってくる。
『神も仏もありませぬ』
著者:佐野洋子
出版社:筑摩書房
63歳になった洋子さんは、「まさか私が63? 当たり前のことなのに、嘘だよなあ」と不思議な気持ちになる。シルバー割引きで「ハリー・ポッター」を観に行ってはしゃぐ一方で、チケット売り場の女の子が「シルバー」に疑いをもたないことにちょっとムッとする。
いつの間に年をとったのだろう。でも本当はいつからか大人になったわけではなくて「青い空に白い雲が流れて行くのを見ると、子供の時と同じに世界は私と共にある。60であろうと4歳であろうと『私』が空を見ているだけ」と気づく。
群馬の山の中に暮らし、浅間山を近くに眺めながら、村の友人たちと行き来する日々。ゆったりした生活が送れそうだが、驚きのハプニングが待っているのが洋子さんならでは。露天風呂に入りたい一心で、真っ暗闇の道なき道を探しまわって傷だらけになったり、農作業の手伝いをしたり。長年連れ添った猫との別れの場面は胸にずしんとくるけれど、洋子さんは毎日を胸ときめかせて生きている。
別に余裕のあるおとなにならなくたっていいじゃない、あくせくしても、ばかみたいに見えてもいいじゃないの! すーっと深呼吸したような気分になれるエッセイです。
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「まるごと 佐野洋子展 ―『100万回生きたねこ』から『シズコさん』まで―」が開催中です。佐野洋子の多彩な活動を紹介した企画展。2015年9月27日までです。機会のある方はぜひ。
【会期】2015年7月25日(土)~9月27日(日)
【会場】横浜市中区・神奈川近代文学館第2・3展示室
Love, まっこリ〜ナ
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