父の日のカフェボンボンは、『お父さん大好き』。
きらめく感性で現代を切り取る作家、山崎ナオコーラの中短編集です。
『お父さん大好き』
著者:山崎ナオコーラ
出版社:文藝春秋
『手』の主人公・25歳のサワちゃんは、「おじさん」が大好き。
「ハッピーおじさんコレクション」というホームページを作ってネット上で公開している。おじさんたちの笑顔や疲れた後ろ姿なんかを収集して載せるのだ。会社の先輩とこっそりつき合いつつ、30歳年上の上司とも一緒に過ごす。
サワちゃんはクールに淡々と男たちを観察しているようだけれど、芯のところでやさしい。それは彼女が「たまたま側(そば)にいる人を滅茶苦茶に愛したいとときどき思う」ことと関係あるのかもしれない。
表題作の『お父さん大好き』は、妻が家を出てしまい、血のつながらない娘と暮らすサラリーマンを描いた心にしみる作品。
「ユカリちゃん、ただいま」
「ごはん、あっためとくね」
晩ごはんのあと、ふたりは一緒に大きく白い月を見る。部屋に戻ろうとした父の背中にユカリがささやいた言葉は……。
この作品はNHKラジオ文芸館で放送され異例の話題となりました。誰かとつながっていたい。そんなひりひりする気持ちを味わって。
父の日に。
Love, まっこリ〜ナ