今日のカフェボンボンは、『芝生の復讐』。
ビートニクの作家といわれたリチャード・ブローティガンの自伝的要素の強い短編集。
作品には、少年時代を過ごしたワシントン州やオレゴン州の記憶、夢を抱いて移り住んだカリフォルニアでの出来事が色濃く反映されています。
『芝生の復讐』
著者:リチャード・ブローティガン/訳:藤本和子
出版社:新潮社
62の物語はどれも短く印象的で、ブローティガンがシャッターを切った写真のよう。
表題作の「芝生の復讐」は、ワシントン州の小さな町を舞台に描く祖母をめぐるストーリー。祖母は密造酒を作って郡を手中におさめる伝説の女。祖父は二流の超能力者。
ある日、オレンジと陽光を売るセールスマンが立ち寄って、そのまま祖母と同棲。この男が庭の梨の木に灯油をかけて火を放つ光景が、作者の人生最初の記憶でもあるというから途方もない。
一方で、「完璧にカリフォルニア的な日のこと」など、カリフォルニアの陽光あふれる作品も多く、どちらもブローティガンにとってのアメリカの風景であることが伺えます。
トルーマン・カポーティのアメリカ、ポール・オースターのアメリカ、スティーヴン・キングのアメリカ……。どの作家が描くアメリカも魅力的だれど、ブローティガンのアメリカはあっけらかんとしていて、そこはかとないおかしみもあって、チャーミングで愛らしいのです。
本書の「朝時間」は、若々しく甘い作品「朝がきて、女たちは服を着る」からこの一文を。
“彼女とはまあたらしい関係だったから、彼女が服を着るところを見るのは初めてだったー。”
本のお供には、アメリカン・ダイナーのチョコレートサンデーはいかがでしょう。チョコレートソースやアイスクリームがたっぷりのったサンデーをスプーンにひとすくい。まるいガラス容器の向こうに、アメリカの風景が見えるようです。
ブローティガンの代表作『西瓜糖の日々』もおすすめです。
Love, まっこリ〜ナ