何万キロもの旅をする渡り鳥ほど世界の広さを実感させてくれるものはない。どこまでも世界がつながっていることも。
『西の魔女が死んだ』『裏庭』の著者・梨木香歩が渡り鳥の足跡をたどりながら、生き物の命と自然の関わりを見つめます。
『渡りの足跡』
著者:梨木香歩
出版社:新潮社
渡り鳥の飛ぶ行程を人工衛星を利用して追跡する方法があります。追跡調査の結果、南半球から北半球へ、1万キロ以上もの距離を無着陸で飛び続けた鳥もいたことがわかったそうです。
人間なら到底不可能なボーダーレスなルートで、国境をいくつも越えて旅をする渡り鳥。なぜ一度も休まないでこんなにはるばると命がけの旅をしてきたの?
答えは誰にもわからない。たぶん生まれついて持っている能力に従ったのだろうということぐらいしか。
知床、諏訪湖、カムチャツカへと旅する著者は、空を飛ぶ鳥の目線で世の中を俯瞰しているよう。はるかかなたの美しい風景に、世界の広さを思います。
本書の「朝時間」は、知床の断崖の上を大風に乗って舞うオオワシ。
この風をつかまえたオオワシたちは、一斉に千島方面へ飛んで行きます。
渡り鳥が教えてくれる大気や風の動きを感じて、静かな幸福感に満たされます。
本のお供には、ジンジャーエールをいかがでしょう。著者が訪れた北国の暖炉のあるカフェにちなんで……。
以前ご紹介した美しい水辺をめぐるエッセイ『水辺にて』もおすすめです!
Love, まっこリ〜ナ